幸福な食卓

著者 :
  • 講談社 (2004年11月20日発売)
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「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」
春休み最後の日、朝の食卓で父さんが言った。
主人公・中原佐和子の父親が仕事の教師を辞め、そして父親も辞めると宣言する。

これが物語の始まり。なかなかインパクトのある出だしに、少々、父親の無責任さに苛立つ。

当然ながら『お父さんを辞めるなんて、なんて無責任な父親なんだ!』と思ってしまう。
しかも兄・直は、憤りも動揺もなく「いいんじゃない?」の一言を発したのは、この兄の思考は?と疑ったのち、学年トップの成績で英検1級、漢検1級であることを知ると『そうなんだ』と逆に落ち着いた思考だと感心してしまう。(すごい先入観だ)

自殺未遂の父、夫の自殺未遂に病んでしまい家を出た母(家を出た後は生き生きしているようだ)、天才児で大学を中退し農業をする兄、父の自殺未遂のショックから梅雨時期に具合が悪くなる佐和子。これが中原家である。

「うちの家庭って崩壊してるのかな?」
私がプリンにスプーンを突き刺しながら言うと、母さんが目を丸くした。「どうして?恐ろしく良い家庭だと思うけど」「父さんが父さんを辞めて、母さんは家を出て別に生活してる」
(中略)
「でも、みんなで朝ご飯を食べ、父さんは父さんという立場にこだわらず子どもたちを見守り、母さんは離れていても子どもたちを愛している。完璧。」

良い家庭の基準はその家族が決めるものである。側から見ていて崩壊していても(笑)、その家族がいいと思っていれば、これが普通だと思っていれば、それでいい気がする。
仮に中原家が崩壊していたとしても、私がこの家族を良い家族だなぁと思えたのは、家族が家族のことを考えていることだ。

佐和子が高校になってつき合った大浦君が、亡くなった時、佐和子を支えたのは家族であった。直ちゃんが、小林ヨシコに振られそうになった時に一緒に悩んだのは佐和子だった。

「幸福な食卓」の定義、この本を読んで、タイトルの意味がわかる。家族が揃って食事ができることが何よりの幸福ではなかろうかと同意する。少なくとも中原家においては…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年6月13日
読了日 : 2021年6月13日
本棚登録日 : 2021年6月13日

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