盲目的な恋と友情

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  • 新潮社 (2014年5月22日発売)
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「盲目的な」というより「歪んだ」あるいは「屈折した」恋と友情という方がしっくりくる。
屈折しすぎて逆に怖いもの見たさのような感覚になり、印象に残る。
表紙の女性のしっぽがとても不気味でそれでいてこの女性の顔が可憐で可愛い。とにかく表紙の不気味さも不気味なのだご、何となく可愛くて、ツボってしまった。

前半の「恋」の章は、『愚かな恋の物語り』。美しい女子大生・一ノ瀬蘭花と彼女の大学にプロの指揮者・茂実星近との歪んだ恋の始まりから末路までが綴られ、そこにちらほらと蘭花の親友・傘沼留利絵が登場する。

後半の「友情」は、『独占欲の強い友情の物語り』。傘沼留利絵の美醜の性格形成の果てに蘭花が飛び込んでくる。

女性の持つ自尊心と嫉妬心があからさまに表現されていて、終始ゾクゾクする。

タカラジェンヌの母をもつ女子大生の一瀬蘭花は、自分の美貌に無自覚であった。大学のオーケストラに迎えられる指揮者は、カッコよくなくても、指揮者という肩書が何倍にも株を上げて、オケの女性たちの憧れとなっている。そして、そんなオケの指揮者として美形の茂実星近が迎えられ、2年の夏から彼女と付き合うことになる。
オケで注目の彼。師事・室井の力によりステータスの高い生活を送る茂実の彼女という地位に酔いしれる蘭花。
茂実が室井の妻と関係があったことがわかっても離れることができない。世間体の高い彼の彼女というプライドが、別れのタイミングを逸してしまう。

小学生の時から笑われる女子側にいた傘沼留守利絵。友達がずっといなかった留利絵に大学になってようやく、話の通じる友・蘭花ができた。
しかも彼女は、みんなが一目を置く美少女。そんな彼女の一番の友であるということを周りから認めてもらうことに執着しすぎて、道を外してしまう。

世間を知らない少女たちの行動、考え。加えてプライドが高く、自分が一番でないと納得できない彼女たちの結末に、軌道修正できるきっかけはいっぱい合ったのに…と思いながらも当然の流れのごとく結末を受け止めてしまう。

恋に堕ちる愚かさ、恋から拒絶される屈辱感。醜い女性心理、肥大していくプライド、嫉妬に縛られて、想定外の行動で終わる結末。

人間の心のどこかに理解できないこんな感情が潜んでいるのではないかと考えてしまう作品であった。
(この歪みに結構ハマってしまった…笑)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年3月18日
読了日 : 2021年3月18日
本棚登録日 : 2021年3月18日

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