そんなに伊坂幸太郎先生の作品は読んではいないが、この作品もこの筆者の展開らしさを感じられた。
第35代アメリカ大統領 ジョン・F・ケネディが暗殺された。事件直後に逮捕されたリー・ハーヴェイ・オズワルドがその2日後に「暗殺犯」として、射殺される。犯行を否認したまま殺されたオズワルドは、”I’m just a patsy !(俺は はめられたんだ!)”という言葉を残している。
コロナ禍で見た番組で、この話をしていた。
本作を読み終えて、オズワルドは本当ははめられたのだろうか?もし、はめられたことが事実であっても、真犯人が出てくることはない。であれば、本作も同様にはめられたとしても、犯人は出てこないし、主人公が無実を証明することは難しいのだろうと、予想していた。
読者としては、真実と主人公・青柳雅春の気持ちがわかるだけに、マスコミや世間、そして政府機関への苛立ち、怒りを感じる。
現実社会の中では、マスコミの情報だけで判断をしなければならない。作られた情報であると分かっていても、矛盾していると感じる情報であっても、そのソースに頼るしかないため、混乱をしてしまう。
何が真実であるかを見極めるのは、実際には、難しい。だが、一方的な情報を受け入れるにあたり、何を自分が信じ、どのような行動をとるのかということを、判断しなければいけないと強く感じる作品であった。(おそらく著者は、そんなことを伝えたいのではないだろうが…)
主人公に感情移入してしまい、読むのが途中で苦しくなった。
また、自分の周りで起こっていることが、自分を陥れるためだとは普通は思わない。だから、もし、自分が事件に巻き込まれても、何も出来ずに受け入れるだけのような気がする。だからこそ、青柳が反撃するような展開であって欲しかった。
- 感想投稿日 : 2020年10月23日
- 読了日 : 2020年10月23日
- 本棚登録日 : 2020年10月23日
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