久しぶりに、恩田陸先生の作品を読んで、感動した!時間を忘れて没頭してしまった。
そして、何より、音楽の世界の広がりと厚みを文章で伝えることができる恩田陸先生の知識に羨望し、憧れる。絶対、音楽をしている人でないと、書けない作品だとわかる。
また、そのことが逆に自分の音楽的センスと知識の欠落を認めざる得ない作品だとも思った。
自分が多少なりとも知識がある作品を読んだとき、例えば、絵画や陶芸であれば、描写されている記述に、「知ってる」とその記載に同意したり、時には「それは何故だから」とかその関連知識を考えたり、「それは違う」反論したりすることができる。が、今回は「へー、そうなんだ」と、ただ、ただ感心することばかりで、その「そうなんだ」の数の多さに自分の無知さを認めてしまった。
そう思った理由に、かつてピアノを習って真剣に取り組んでいたことがある過去の歴史があるからであろう。
とにかく感動は、この物語で出てきているショパン、リスト、ドビュッシー、ラフマニノフ、シューベルト、メンデルスゾーン、ショパン、ブラームス、フランク、フォーレ、ストラヴィンスキー、シューマン、モーツァルトは、読みながらメロディーが流れてくるところだ。活字を目で追いながら、頭の中で常に音楽が流れている状態で、とても迫力があり、コンクール会場にいるような臨場感にみまわれる作品であった。
本作は、ピアノコンクールという舞台に3人の天才が引き寄せられる話である。天才の一人は養蜂家の父と各地を転々として自宅にピアノがないという16歳の風間塵、二人目の天才は、かつて天才少女と称されていたのに13歳の母の死以来ピアノから離れていた20歳の栄伝亜夜、そして三人目は、ペルーの日系3世の母を持ち名門音楽院生の19歳マサル・C・レヴィ・アナトール。
音楽の神様に愛されている彼らが芳ヶ江国際ピアノコンクールで共鳴する。
そして同じくこのコンクールには秀才の高島明石も参加していた。
三人の天才の素晴らしい演奏は、凡人には理解しがたい夢の世界の出来事のように感じるのを、この高島明石の登場により読者目線に下がる。(と、言ってもそれでもまだまだ上の方のレベル過ぎるのだが)
コンクール受賞結果には、少々不満も残るが、それぞれの受賞者が、未来に向けて活躍していく姿を想像し、同時に受賞者たち挑戦と期待、そして喜びを共感できた気持ちを味わえた。
- 感想投稿日 : 2021年7月4日
- 読了日 : 2021年7月4日
- 本棚登録日 : 2021年7月4日
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