結構分厚いなぁ、463ページ。初めての作家か…直木賞受賞ね…ランって書いてあるし、読んでみようかなと、いろいろ考えてから読み始めた。
13歳の時に家族を事故で亡くし、年前に同居していた奈々美おばちゃんを亡くし、超後ろ向きで、内向的な主人公・環は、仲良くなった自転車屋さんの紺野さんの息子に渡す予定だったロードバイク・モナミ1号をもらい、生きて「あの世」に紛れ込むことができるようになる。そして、そこで死んだはずの家族と再開する。だが、本来の持ち主で、亡くなった紺野さんの息子が、セカンドステージに行けるようにロードバイクを返し、自分の力でまた、家族に会いに来るためにランニングを始める。
「たら」、「れば」は人生を後ろ向きにすると、父に教えてもらったはずなのに、こんなに後ろ向きの人生を選択する環は13歳から成長するどころか後退してるではないかと、イラッとする箇所がいくつもあった。そのせいか、読み進めていても、何故か作者は何をを伝えたいのだろう?っと、終始考えてしまう。
作品としては、軽くて後ろ向きな環がいつしかチームメンバーを受け入れフルマラソンで目標を達成し、チームを受け入れるようになる…と、いうストーリーだろうと誰しもが想像できる。一見ポジティブなように思えるのだが、本当に伝えたいことは何だったのだろうか。
人間必死になればなんでもできる…違う、もっと大切なこと。後ろ向きの性格を克服し、成長していく環…これも違う。チームワークの大切さ…疑しい。
もし、私だったら、この作品を読んだ読者に「人生を走り抜く大切さ」をランというタイトルとかぶせて、分かって欲しいと思う。
私もランニングで、ほぼ毎日12キロくらいは走っているが、走っている間は、辛いし孤独を感じている。でも、走り切った時は、今日も走ったと言う達成感と充実感がある。人生は辛い時もあるだろう。でも、命が尽きる時に人生を走ってきた充実感を感じる生き方をしたい。勝手な解釈ではあるが、だからこの本のタイトルがランのような気がした。
そう考えると、環の「新たな出発」とタイトルのランの関係が、もっと素敵に思えてくる。
- 感想投稿日 : 2020年5月28日
- 読了日 : 2020年5月30日
- 本棚登録日 : 2020年5月26日
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