ラン

著者 :
  • 理論社 (2008年6月19日発売)
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本棚登録 : 2220
感想 : 388
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結構分厚いなぁ、463ページ。初めての作家か…直木賞受賞ね…ランって書いてあるし、読んでみようかなと、いろいろ考えてから読み始めた。

13歳の時に家族を事故で亡くし、年前に同居していた奈々美おばちゃんを亡くし、超後ろ向きで、内向的な主人公・環は、仲良くなった自転車屋さんの紺野さんの息子に渡す予定だったロードバイク・モナミ1号をもらい、生きて「あの世」に紛れ込むことができるようになる。そして、そこで死んだはずの家族と再開する。だが、本来の持ち主で、亡くなった紺野さんの息子が、セカンドステージに行けるようにロードバイクを返し、自分の力でまた、家族に会いに来るためにランニングを始める。

「たら」、「れば」は人生を後ろ向きにすると、父に教えてもらったはずなのに、こんなに後ろ向きの人生を選択する環は13歳から成長するどころか後退してるではないかと、イラッとする箇所がいくつもあった。そのせいか、読み進めていても、何故か作者は何をを伝えたいのだろう?っと、終始考えてしまう。

作品としては、軽くて後ろ向きな環がいつしかチームメンバーを受け入れフルマラソンで目標を達成し、チームを受け入れるようになる…と、いうストーリーだろうと誰しもが想像できる。一見ポジティブなように思えるのだが、本当に伝えたいことは何だったのだろうか。

人間必死になればなんでもできる…違う、もっと大切なこと。後ろ向きの性格を克服し、成長していく環…これも違う。チームワークの大切さ…疑しい。

もし、私だったら、この作品を読んだ読者に「人生を走り抜く大切さ」をランというタイトルとかぶせて、分かって欲しいと思う。
私もランニングで、ほぼ毎日12キロくらいは走っているが、走っている間は、辛いし孤独を感じている。でも、走り切った時は、今日も走ったと言う達成感と充実感がある。人生は辛い時もあるだろう。でも、命が尽きる時に人生を走ってきた充実感を感じる生き方をしたい。勝手な解釈ではあるが、だからこの本のタイトルがランのような気がした。

そう考えると、環の「新たな出発」とタイトルのランの関係が、もっと素敵に思えてくる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年5月28日
読了日 : 2020年5月30日
本棚登録日 : 2020年5月26日

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コメント 1件

kurapapaさんのコメント
2020/05/28

森絵都さん、「カラフル」「みかづき」とか読んで好きな作家さんなんですが、「ラン」は読んで無かったです。レビュー拝見して面白そうなので、今度読んでみます!

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