主人公・早川清の清い精神は至って健康。いつも正しくあることに一番重きをおいた。何にでも全力で品行方正、陰口、噂話も言ったことがない。その代わり、身体は厄介で、四つ足動物の肉を食べると吐き気に襲われ、甲殻類を食べると下痢を催す。辛い物を食べると頭痛、刺激物で鼻血を出すという完璧なアレルギー体質であった。
そんな清が全身全霊を注いで打ち込んだのがバレーボール。
完璧な精神とある意味完璧な身体だからこそ、補欠の山本さんのミスが許せなかったのであろう。
試合後に山本さんに厳しくあたり、翌日山本さんが自殺する。
そこから清は、未来を諦める。
未来を諦めたからって、いきなり不倫とは…
そこまで落ちていったという意味なんだろうけど、少々そのギャップに引いてしまうほどだった。しかも…優しい弟と比較してしまい、ますます不倫相手の浅見が偏屈で自分勝手に見えてしまう。
さて、清の再生に大きく貢献しているのが、文芸部の唯一の部員でかつ部長の垣内君だ。垣内君とのテンポの良いが少々噛み合っていない会話に清だけでなく、私も癒され、垣内君のシリアスな会話は誠実に感じる、説得力もあり、信頼できる。
また、不安定な清を気遣い理由をつけて家に遊びに来る弟の拓実。彼の発言は素直すぎて、微笑ましく、姉へのエールが聴こえてくるようだ。こんなに姉を思う弟もいるんだと尊敬してしまう。
事件後、淡々と時が過ぎていく中で、清の近くにいる垣内君や拓実の行動、言動が本当に暖かく感じ、清の平凡な日常だけでなく私の日常の癒しのようにも感じた。
いろんな人に支えられながらも清自身も山本さんへの気持ちを忘れることがない誠実さ持っていることが、最後に山本さんのは家族の気持ちも動かすことになる。
ちょっと変わった主人公ではあったが、素直で人間味のある主人公であったと振り返ることができる。
- 感想投稿日 : 2021年8月11日
- 読了日 : 2021年8月11日
- 本棚登録日 : 2021年8月11日
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