妊娠・出産・育児にまつわる女性の様々な「どうしよう」についての声の詰まった本。子どもを持たない人、持ちたい人、子どもを産んだ人、働いている人いない人、色々な立場や考えの人に実際に話を聞き、感じたことを丁寧に受け止めて言葉にしているとても良い本でした。自分や家族の状況、性格や考え方、体調や体質、性別に関するあり方や感じ方、あるいは運や巡り合わせなど、本当に一人一人様々な「どうしよう」があり得ることを感じた。
私自身は子どもや子育てにそれなりの関心を持ち続けて来たし、妊娠も出産もこの男の身で変われるものなら変わりたいとも思ってきたけど、自分が想像できる範囲なんてたかが知れていると改めて感じた。まぁこの本を読んで色々感じても、変われるものなら、という考え自体に変化はないけれど。
この本のレビューで「もっと多くの女性に読んでほしい」というのを見かけたし、犬山さん自身も女性に向けてということで書いていますが、これは男性も含めてすべての大人が読むべきだと思う。自分が個人的に妊娠・出産に関わる関わらないに限らず、社会的に完全に無関係な人などいないのだから。にも関わらず妊娠・出産についてあまりにも知らないことが多すぎるんだ。もちろん知ったからとすべてを受け止めたり肩代わりできるわけではないけれど、知ることではじめてのできる配慮や作れる仕組みもあると思うから。
あとは、男性として読んで感じたこととしては、女性が人によってさまざまに悩んでいたりすることと同じように男性側も感じ方も考え方も、妊娠・出産への向き合い方もさまざまであるはずなんだけど、「無理解な男性」と一括りに括られてしまっているようで立場なく感じる。まぁ実際無理解や無関心がまだまだ多いのだろうし、じゃあ男性側の視点からこの本のようなものを作れる人がいるかと言われるとまだそこまで社会的に成熟していないんだろうな、とは思うけど。とはいえ、個人的にはこの妊娠・出産の話題に限らず世の男性像的なものと一緒くたに扱われることに違和感を感じることも多いので、そういうことをこの本を読みながらも感じて「あ、妊娠・出産への無理解から社会の中で感じる違和感もこういう感覚に通じるのかも」とか、だんだん本自体の中身と離れたことも考えたりしました。語り口が平易で読みやすいからこそ、自分の思考も日常の延長に飛びやすく、こういう色々感じて思考が飛んでいくのは良い本だなと思います。読んでよかったし、今後も考え続けていきたい。
- 感想投稿日 : 2019年10月18日
- 読了日 : 2019年10月3日
- 本棚登録日 : 2019年10月3日
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