いい子に育てると犯罪者になります (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社 (2016年3月17日発売)
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感想 : 58
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目からウロコの一冊。親になったとき、自分を見つめ直したいとき、過去を振り返りたいとき、この本をまた手に取りたい。

自身に少なからずいびつさを感じながらも、振り返ると自分はいい子だったと振り返る人こそ一読すべき一冊だと思う。
以下、回想。
自分は絵に描いたような「いい子」だった。しかし同時に自分の心を守るためなら人を傷付けてもかまわないと思う側面があった。私の心は傷付くことを恐れ、人の怒りに相当敏感だった。
この方の授業を受けて感想文を書いたらきっと冒頭で紹介されるような生徒だったろう。
親のせいとは思わない。でも、私の危険の芽に、親は気が付かなかった。気が付いたら向き合ってくれたのかもしれないけれど、私自身が巧妙に隠したから、気が付かなかったのだろう。
幼い頃は「自分の心を守る」ことが最優先で、「自分の危険の芽を摘み取らなかったらこの先どうなるだろうか?」というところまで考えが及ばない。
表面的には聞き分けがよく素直で明るい生徒。いかにも非行へ走りそうな少年少女より先に、私の心の矯正教育を優先してくれる教師がどこにいるだろうか?
また、自身が教師という職業に憧れ、周囲の教師に歩み寄っていたことも影響したかもしれない。自分を慕う生徒に対し、「君は間違っている、危ない、心を見直せ」と言える教師がどれほどいるだろうか?
小学校では私の性質を見透かすようなベテラン教師がいたが、矯正するところまでは至らなかった(私は悪い意味で教師の熱意をかいくぐり、逃げ切った)。
自身にとって救いとなりうるのは、そうした自分の歪みをこれまでも認識していたし、今ははっきりと意識できることかもしれない。
大人となった今、自分の性質を親のせいにするのはナンセンスだ。大人として、自分を矯正していかないといけない。
この方の言うとおり、「これからは自分を見つめて、自分をコントロールしていきます。」という宣言は意味を持たないだろう。
私は弱い人間で、自分を守るためなら今でも人を傷付けうる人間だ。認めたくないけれど、きっとそうなのだろう。
弱さを常に抱えながら、いつも自他に言い訳し、逃げて生きている。だから周囲の人間の弱さを見ても、責めるのはよそう。お互い弱い人間だなと、受け入れていけたらいい。

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感想投稿日 : 2021年11月12日
本棚登録日 : 2021年11月11日

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