初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 1-6 スペンサー・シリーズ)

  • 早川書房 (1988年4月1日発売)
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感想 : 90
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アメリカの作家「ロバート・B・パーカー」のハードボイルド小説『初秋(原題:Early Autumn)』を読みました。

海外のハードボイルド小説は一昨年の11月に読んだ「レイモンド・チャンドラー」の『ロング・グッドバイ』以来なので久しぶりですね。

-----story-------------
離婚した夫が連れ去った息子を取り戻してほしい。
―「スペンサー」にとっては簡単な仕事だった。
が、問題の少年「ポール」は彼の心にわだかまりを残した。
対立する両親の間で駆け引きの材料に使われ、固く心を閉ざして何事にも関心を示さない少年。
「スペンサー」は決心する。
「ポール」を自立させるためには、一からすべてを学ばせるしかない。
「スペンサー」流のトレーニングが始まる。
―人生の生き方を何も知らぬ少年と、彼を見守る「スペンサー」の交流を描き、ハードボイルドの心を新たな局面で感動的に謳い上げた傑作。
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私立探偵「スペンサー」を主人公とするシリーズ全39作品のうちの第7作にあたり、1980年(昭和55年)に発表された作品です、、、

「スペンサー」と15歳の少年「ポール」の交流が物語の中心となっており、固く心を閉ざして何事にも関心を示さない少年「ポール」を「スペンサー」が、精神的にも肉体的にも鍛え、自立し、自分の力で運命を切り開くための生き方を伝授して行く… というプロセスを描いた作品でした。

謎解き等のミステリ的な要素はほとんどないので、本シリーズの世界観や「スペンサー」の価値観に共感できないと、愉しめないだろうなぁ… と思える作品ですね、、、

個人的には、少年が成長するプロセスを描いた作品は大好きな部類だし、「スペンサー」のカッコ良さも感じられたので、愉しみながら読めましたね… 『東西ミステリーベスト100』で海外篇の93位として紹介されていた作品です。


「スペンサー」は、「パティ・ジャコミン」という依頼人から、離婚した夫の「メル・ジャコミン」が、息子の「ポール」を連れ去ってしまったから、奪い返して来て欲しいの依頼を受ける… 「スペンサー」は、「メル」の愛人「エレイン・ブルックス」の住所を手がかりに「メル」の居場所を突き止め、「ポール」を見つけるが、彼は両親の愛情も知らず、固く心を閉ざして何事にも関心を示さない少年だった、、、

依頼通り「ポール」を「パティ」の所へ連れ帰るが、「パティ」は「こんなに早く帰って来るとは思わなかった」と、「スティーヴン・コート」という男を連れ込んでおり、「スペンサー」は「ポール」と二人で食事に行くことに… しかし、「ポール」は食事にも関心を示さず、注文も全て「スペンサー」任せだった。

3ヵ月後、「パティ」から、「ポール」の周りを怪しげな男たちがうろついていると連絡が入る… 「メル」に依頼された男たちが、「ポール」を「パティ」から奪おうとしていたのだ、、、

「スペンサー」は、「パティ」の依頼で家に住み込み、一度は男たちを追い払うが、「パティ」が攫われてしまい「ポール」との交換を要求される… 「スペンサー」は、相棒の「ホーク」の助けを借りて「パティ」を奪い返すことに成功する。

その後、「パティ」から、「ポール」を「メル」に見つからない場所にかくまってほしいと、依頼された「スペンサー」は、「ポール」が夫婦の争いの道具として利用され、彼自身が自立していないことを見抜き、ボクシング、大工仕事、ランニング等を軸にトレーニングを行い、「ポール」を自立させようとする… しばらくして突然パティから連絡があり「息子をメルのもとに返すから返して欲しい」と言われるが「スペンサー」は「ポール」のために拒否、、、

「スペンサー」は「ポール」を両親から引き離すために、二人の弱みを探り出そうとする… 「スペンサー」と「ポール」は、「メル」の背景を洗い、「ハリー」とつるんで放火による保険金詐欺を働いていていることをつきとめ、さらに「パテイ」は毎月ニューヨークへ出向き男漁りをして過ごしていることをつきとめ、ようやく自己を確立した「ポール」が演劇学校に行きたいと言うのを受け、「スペンサー」は二人に「ポール」の生活に干渉しないこと、「ポール」の生活に必要な金をだしてやることを約束させる。


「スペンサー」の言葉や行動は、「ポール」のように無気力に生きる少年だけでなく、いつの間にか惰性で生きるようになってしまった、我々、大人の心にも響きますね、、、

シリーズの第18作『晩秋(原題:Pastime)』では、青年となった「ポール」と「スペンサー」が再会するらしいです… 機会があれば、読んでみたいですね。





以下、主な登場人物です。

「スペンサー」
 私立探偵

「スーザン・シルヴァマン」
 スペンサーの恋人

「パティ・ジャコミン」
 依頼人

「ポール・ジャコミン」
 パティの息子

「メル・ジャコミン」
 パティの前夫

「スティーヴン・コート」
 パティの愛人

「エレイン・ブルックス」
 メルの愛人

「バディ・ハートマン」
 用心棒

「ハリイ・カトン」
 中古車センターのオーナー

「シェリイ」
 ハリイの手下

「ホーク」
 スペンサーの相棒

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: <読む>ミステリ(海外)
感想投稿日 : 2023年1月6日
読了日 : 2018年5月22日
本棚登録日 : 2022年3月11日

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