友人から、すごい本があると教えられて知った。
主題からまず息苦しさを感じ、しばらく読まずにいたが、取り組まねばならない課題のような気持ちで読み始めた。
かなり気構えて、心にある種の防御をしながら読み始めると、想像とは違う静かな表現に引き込まれ、防御が緩んだところにするりと入ってくるようだった。
馴染みのない方言のはずが、何の阻害もなく、心情が雪崩れ込んでくる。語られる日常が、起きている凄まじい事態の中で、対比され、光のように感じられる。その間には、水俣病の症状等が細かく淡々と記され、またさらにその闇がより一層深くなる。
公害という近現代の社会問題や、社会構造の在り方等、語るべきはいろいろあるとは思うが、それを超えた部分で自分の中に残り続ける作品だと思う。
私たちがひとりひとりであること、人間であること、自然であること、それが当然として社会という曖昧なものより優先されねばならないことを改めて喚起させられた。
読書なんだから楽しい気持ちになるものを読みたいと思う時も多々あるが、こういった本を読むと改めさせられる。
読むことができてよかったと思う本のひとつ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年7月8日
- 読了日 : 2021年7月7日
- 本棚登録日 : 2021年7月7日
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