良くも悪くも村田沙耶香さんらしい短編集だとおもった。本作が面白いと感じた人は「生命式」、「地球人間」なんかも読んでみてもいいのでは。僕が「村田沙耶香さんらしい」と表現した意味がなんとなく分かってもらえると思うので。
村田さんの作品は「普通とは?」ということを考えさせられる作品が多い。僕たちが感じる「普通」とは、その時代の、その社会の、その文化におけるという極めて限定的なもので、たとえば時代が違えばその「普通」が簡単にひっくりかえってしまうことがありえる。
本作は「僕たちが思う普通」が揺らいだ世界で、10人も生んで人口増加に貢献したのだから一人くらい殺してもOKだよねという考え方だったり、セミやトンボを食べたり、はたまた恋人関係も「カップル」ではなく三人で付き合う「トリプル」という考え方が「普通」となっている。
村田さんの作品は一読すると奇抜と感じるものが多いけど、奇抜と感じること自体に僕たちが「普通」という考え方に強く影響していることを思い知らされる。
まあ結局いろいろ書いたけど、本作のいいところは「自分では到底思いつかないような不思議な世界観」を味わえるところだとおもう。
堅苦しい作品にちょっと飽きてしまったなという人にはオススメ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年1月14日
- 読了日 : 2024年1月13日
- 本棚登録日 : 2024年1月13日
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