犯人はなぜ密室を作ったのか?なぜ死体に文字を刻んだのか?なぜコンクリートを盗んだのか?
そして、なぜ殺したのか。
様々なWhyが交錯し、予想だにしない真相が導かれる。
まず、「コンクリートが盗まれた」という事実から盗んだ=犯人はコンクリートに何かを隠した=その時持ち出せなかった という単純な三段論法から犯人を特定するのが見事。「もし、西之園くんの足がもう少し大きかったら、この事件は解決していなかったでしょう。」という皮肉的な一言も最高だ。
また、寛は元々部屋にいて、入ってきた稔を殺してから出てきたというトリックも単純だが気づかなかった。元々は本物の稔だったが、部屋に入る前から寛が化けていたと誤認させるのが上手い。
「結城稔を杉東よりあとに殺したことを隠すために死体に文字を刻んだ。」
「入れ替わりのトリックを成立させるためには結城に尾行をつけさせなければならないので、稔が疑われるように歌詞に似せて殺した」
というような一つ一つの事柄に合理的な理由がついているのも良い。
ここまででもかなりの傑作だが、これに加えて動機も衝撃的。
もう一度、真っ白なノートが欲しかった。衝撃的だが、理解できないこともない、むしろだれしもこういった発想は持つものではないだろうか。
すべて、素敵なイーコールのために……
最後の一文もとても良い。ミステリとしての出来も超一級品。それに加え、心に残る表現、魅力的なキャラクター。最後の作品だ。
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- 感想投稿日 : 2022年4月6日
- 読了日 : 2022年4月3日
- 本棚登録日 : 2022年4月3日
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