向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2008年7月29日発売)
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本棚登録 : 31737
感想 : 3565
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本格ミステリは作中に虚実入り混じっており、読者は探偵とともに、その中から実を見極め、真相を探り出す、というのが楽しみの一つだろう。
しかし、本作は、基本的には虚実の虚しかない。実を探り出すのではなく、違和感のある虚から真相を探り当てていくしかないのだ。
ただ、本作は、気持ちのいい青春ものではなく、最初から最後まてずっと、気持ち悪さしかない物語なのだ。
故に、この作品は道尾秀介の代表作と言われながらも、賛否両論あるらしい。それはミステリとしてアンフェアじゃないかというミステリ好きによるものと、鬱々としたストーリーによるものらしい。
私自身、この小説が好きかと言われたら、判断に迷うところではある。
実際、初読は大学の頃で、初めて読んだ道尾秀介の作品が本作だったものだから、この人の本はもう読まないと思ったものだった。しかし、他の作品を何作か読み、当時よりも面白く読めるのではと思って読んでみたが、衝撃度合いは変わらなかった。もしかしたら、結末を知っている分、当時よりも衝撃度合いは強かったかもしれない。
鬱々としたストーリーの中に、細かく張り巡らされた伏線の凄さ。
楽しいかどうかと言われたら、胸を張って楽しい小説だとは言い難い。
ただ、好きか嫌いかで言われたら、胸を張って大好きだと言えるだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年9月25日
読了日 : 2023年8月12日
本棚登録日 : 2023年9月25日

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