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去年だったか、とあるカルチャーセンターのような所で
「映画の見かた、楽しみかた」についての講座に三ヶ月ほど通ったことがある。
ひとくちに映画といっても奥が深く、自分もまだまだ勉強だなと思いましたが。
この小説の主人公、30代のOL香子も退屈なアフターファイブを持て余して
何となくカルチャー教室の映画講座を受講し始め
そこで知り合ったプロデューサーに誘われて映画制作の世界に踏み込んでいくことになる。
彼女を取巻くのは海千山千の映画人。
大御所の映画監督、下積みのまま終わりそうな大部屋俳優、ちょっと遊び人風の危険なカメラマン。
はたして映画は無事に完成にこぎつけるのか・・・。
けして映画に対する情熱をアツく描いた作品ではありませんが
日の当たらない業界の陰を生きる映画人たちの人生観が、さりげないやりとりににじみ出ています。
その屈折感やかすかなニヒリズムが、都会の片隅で生きる人間を描いてきた作家・山田太一の味でしょう。
変わり映えしない日常を送っていた平凡な主人公に、ちょっとしたきっかけで別世界の扉が開く・・・
このへんも小説の中だけの夢物語かもしれません。実際にはどうなんですかね。
僕のほうは結局、何にもないまま淡々と講座を修了。別に映画をつくりたかったわけでもありませんが、その後もあいかわらずの毎日です。
この本を読むと、行動すれば何かが変わるかもしれないと思わされる。見なれた(見飽きた)風景の中に、風を吹かせてみたいものです。
(サイト「本のある時間」掲載)
- 感想投稿日 : 2010年8月29日
- 読了日 : 2010年8月29日
- 本棚登録日 : 2010年8月29日
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