ミチクサ先生 下

著者 :
  • 講談社 (2021年11月17日発売)
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本棚登録 : 340
感想 : 40
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下巻では、「草枕」の舞台となった小天(おあま)温泉への旅行、イギリスへの給費留学、親友・正岡子規の死去などを経て、小説家としての地位を確立し、晩年に至るまでを描く。史実に沿いながらも、それぞれの場面が明るく生き生きと、また、鮮やかに読み手に伝わってくる。
漱石(金之助)がイギリス留学中に発狂したのではと言われたその背景、教師生活がいやになり小説家を目指す上での苦悩もよく描写されていた。
また、今更ながらではあるが「ホトトギス」に掲載された「吾輩は猫である」に始まり「坊っちゃん」、「草枕」、「三四郎」、「こころ」そして晩年を迎え、未完となった「明暗」など多数の名作を残したことの偉大さを実感した。加えて、執筆のきっかけやモデルについても触れられていて小説の舞台裏や漱石という人物の奥行を知れたのも良かった。
さらに、寺田寅彦、中勘助、内田百閒、島崎藤村、志賀直哉、芥川龍之介など、そうそうたる顔ぶれの作家が漱石と交流があり、彼を慕っていたことにも驚かされた。
日清、日露の戦争、文明開化など明治期の時代背景の挿入、ミレイが描いた水辺に浮かぶオフィーリアなど美術作品の紹介もあり、勉強になることも多かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2022年2月17日
読了日 : 2022年2月16日
本棚登録日 : 2021年12月18日

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