この小説を語る上で何かと残虐性が取り沙汰されがちであるが、単に残虐なだけの小説ではない。
フランクは残虐な殺人鬼であったが、一連の犠牲者には共通する特徴があった。「みんな誰かに命令されて、ある種類の人間を演じているだけのようだった。おれはあの連中と接しながらこいつらのからだには血や肉ではなくて、ぬいぐるみのようにおがくずとかビニールの切れ端がつまっているのではないかと思って、ずっと苛立っていた」彼はこのように空虚に生きる人々を切り裂いているのだ。
ウイルスの中には動物のDNAのなかに入り込み、時として生存に有利な突然変異を誘発するものがある。フランクは自分をウイルスのようだと言う。凄惨な殺人事件は人々にショックを与え、深く考えさせる為だ。
本作全体を通じて、意志を持たずに生きることへの痛烈な批判を感じた。意志を持たずに生きるとは、他人とのコミュニケーションや、主体的に考えることを放棄することである。今自分は意志を持って生きられているのか、自分を見つめ直す機会をくれた一冊。
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- 感想投稿日 : 2020年3月21日
- 読了日 : 2020年3月21日
- 本棚登録日 : 2020年3月21日
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