容赦ない。身も蓋もなく徹底的だ。家族を持つこと、子を育むことがかくも露悪的に描かれる。やはり金原ひとみさんだ笑。
何度も手にとっては、読むのを躊躇った「マザーズ」だが、出会えて本当によかった作品だ。
作家、モデル、専業主婦という3人の母親たちがそれぞれの顔を持ち、保育園での出会いをきっかけに物語が進んでいく。
三人三様であるようでいて、この母親たちはみな自分自身を嫌悪している。親との関係性、原家族の在り方(なにがしかの機能不全家族に育っている)、ドラッグやレイプの過去等が、彼女たちの造形を際立たせる。
男女という二人が一つ屋根の下に暮らし、子を育む。当たり前のようでいて、容易くはない。女は妻となり、母となる。夫は妻の出産で父となることは女性に比べて難しく、母である女は男に嫌悪さえ抱く(私もそうだった!)。夫であることも疑う。
母親たちの精神的な孤立や寂しさがこれでもかこれでもかと金原さんの筆で描かれ、改行もとても少ない。頁が怒りと絶望の文字でいっぱいだ。
彼女たちの寂しさの叫びは、怒りや痛みに変容し、私も30年近く前の頼るべのなかった一人っきりの子育てを何度も思い出した。
夜中の授乳、夜泣き、乳腺炎の痛み、中耳炎での通院等、私も大声も手も上げたこともあった。
決して思い起こしたくないあの子育て。分かってもらえない寂しさ、苦しみと同じエネルギーの子どもの愛おしさ。相反する二つの方向の感情で、私もどうしてよいか分からなかった。
頼れる存在がいないこと。
助けてと言えない気質。
どちらも他人事ではなく、3人の母親たちの不道徳とされる行為のなかに、寂しさを重ね、私も没入していく。
暴力、不道徳、不義、裏切り、不実等々満載だが、「いけないんだ!」の先にある、私たちは生きることに何を求め、何に充たされるかを問うている気がする。
「社会的な倫理と自分自身の倫理のはざまで、両方の正当性を公平に吟味して、その中で自分がどういう立場に立つべきかもと考えるべきだよ。」
皆が当たり前のように手にしていること、出来ていることを誰もが自分もと願うものだ。だが、それが本当に自分を充たすものなのか。それさえ手にしていればと、すがっているだけかもしれない。
- 感想投稿日 : 2019年10月3日
- 読了日 : 2019年10月2日
- 本棚登録日 : 2019年9月22日
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