後悔するかもと怖々 手に取ったが、読んでよかった。
太宰の女性独白体は天下一品。
弟・直治(なおじ)の夕顔日誌なる手記や遺書(出た…)、デカダン作家・上原の素行シーンは読み飛ばしたくなったが、その他は食い入るように読んだ。
ロシア人作家や共産主義にどっぷり浸かっているのには驚いたが、わたしは太宰の箴言警句が大好きだ。
冒頭のスープのシーンもよかったし、各章の末文に秀逸なものが多かった。
娘・かず子の、突拍子もない自己中心的な手紙にも不思議に心惹かれた。
太田静子が実際に書いた日記や手紙を元にしたというから、真に迫る表現なのも道理かもしれないが。
◇
恋、と書いたら、あと、書けなくなった。
それから、直治が南方から帰って来て、私たちの本当の地獄がはじまった。
おわかりになります?
なぜ、私がうれしかったか。
おわかりにならなかったら、……殴るわよ。
生まれて来てよかったと、ああ、いのちを、人間を、世の中を、よろこんでみとうございます。
はばむ道徳を、押しのけられませんか?
私は確信したい。
人間は恋と革命のために生まれて来たのだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本近代
- 感想投稿日 : 2024年3月8日
- 読了日 : 2024年3月8日
- 本棚登録日 : 2023年8月20日
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