錦繍(きんしゅう) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1985年5月28日発売)
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本棚登録 : 6977
感想 : 744
5

まず、「錦繍」というタイトルが秀逸。
不倫とか離婚とか心中事件の真相などは、この小説の主題ではないことがタイトルでわかる。

あと、書き出しがとても印象的。
「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした。」
この小説を、端的に美しく表している。

ラストのやり取りがよかった。
手紙から後光が出ていた。特に有馬のほう。
亜紀は父親の無償の愛に守られることで、有馬は令子さんに力強く引っ張られることで、前に進み始める。
助けてくださいって言うことって、すごく大事なことだと思う。
弱っているときは、そばにいる人に助けてもらう。
それで強くなって、今度は弱っている人を助けてあげる。
生きるって、こーいうことなんだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本現代
感想投稿日 : 2023年6月9日
読了日 : 2023年6月4日
本棚登録日 : 2023年5月25日

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