カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)

  • 新潮社 (1978年7月20日発売)
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エピローグのアリョーシャの神っぷりに、前回は単純に感嘆したのだが、今回は怖さに震えた。

「これからの人生にとって、何かすばらしい思い出、特に子供のころや、親の家にいるころに作られたすばらしい思い出以上に、尊く、力強く、健全で、価値のあるものは何一つないのです。
君たちはこれからいろいろな教育を受けるでしょうが、少年時代から忘れずに大切にしてきた、美しい神聖な思い出こそ、おそらく最良の教育にほかならないのです。
そういう思い出をたくさん集めて人生を作りあげるなら、その人はその後一生、救われるでしょう。
そして、たった一つしかすばらしい思い出が心に残らなかったとしても、それがいつの日か僕たちを救ってくれるのです。…
もしかすると、まさにその一つの思い出が大きな悪からその人を引きとめてくれて、『そうだ、僕はあのころ、善良で、勇敢で、正直だった』と思い直すかもしれません」

おそらく「親になる」というプレッシャーからだろうけれど、とにかく ゾッとした。
男の子と判明したので、尚更。
コーリャみたいな子になったら、どーすりゃいいの?(気が早すぎ)
いや、コーリャも可愛いんだけどさ、ハタから見るぶんには。
一緒に暮らすとなると話は別だ。
はあ…

このアリョーシャの青年時代の話を、ぜひとも読んでみたかった。
今度は彼が、大きな悪の前に立つことになるはずだったのだろう。
そのとき彼がどうするのか、どう思うのか、まわりには誰がいるのか、見てみたかった。

そして今回、アリョーシャ以上にわたしがフォーカスしたのはカーチャだった。
カーチャとミーチャの関係性は、そこらへんの現代恋愛小説の男女なんかより、よっぽど多面的で複雑で奥深くて面白い。
愛と憎しみ、嫉妬、軽蔑、プライド、事件、裁判なんかが錯綜したら、キャパオーバーで物語が破綻しそうなものだけれど。
カーチャがミーチャの胸に飛び込むシーンには、感動までした。
最後の最後にやっと二人のなまの会話が見れて、それだけでも感無量なのに、演技だろうと抱き合ってまでくれるとは。
『カラマーゾフ』でいちばん生命力に溢れているのは実はカーチャなのではないかと思うくらい、とにかく今回は彼女に意識が向いた。
前回は気にも とめなかったので、最後のシーンなどまるで忘れていたというのに。

今度は、子供が中学生くらいになったら読む。

以上

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ロシア
感想投稿日 : 2024年2月28日
読了日 : 2024年2月27日
本棚登録日 : 2024年2月8日

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