武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

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  • 新潮社 (2003年4月10日発売)
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猪山家は加賀藩の御算用者、いわゆる経理のプロ
天保10年7月~明治12年の5月(1842~1879年)まで37年間、幕末武士が明治士族になるまでの完璧な記録
家計簿及び家族の所管や日記
金融破綻 地下下落 リストラ 教育問題 利権と 収賄 報道被害などの問題に直面していた

《感想》
磯田先生の本はいつでも情熱が感じられ、それでいて読みやすいしわかりやすい
こちらも夢中で読むことができる
数字が飛び交う文章に、幕末までくると疲れてしまったが、大村益次郎や秋山真之などの有名人が登場し、時代と猪山家の変遷が見えて勉強になった

早い段階で借金に着手したことは、先を見通す力があったと言える
その後、武士としての使命の部分、教育関連と医療にはお金を使い、絵の鯛だったり、我慢できる部分には節約をがんばっていた
祖父、父、子供、共に信用され、出世していったことは素晴らしいし、当然の結果だろう

《内容》
猪山家の借金は年収の2倍あった
藩士の金利は15%を越えるのが普通であった(高すぎるっ!)
理由は大名ほど信用がなく、担保が取りにくいことから高金利だった

天保13年1842年の夏
所持品を売り払って借金を返すと家族全員同意した
父の信之、茶道具をあきらめる
本人の直之、書籍、四書五経は高額で売れた
妻、母、加賀友禅を手放す
以後着物を買わなかった
妻の実家から1000匁(もんめ)援助
勤務先から500匁借用
それでも2200匁残った借金は四割返すから無利子十年賦
利払いの圧迫から解放され破産からよみがえった

猪山家が貧しくなった理由
江戸詰の負担が重い(二重生活)
金利が高い
勤務にあった俸禄が支払われない
接待交際が多い(親類、町方など)
家来と下女の人件費
出産儀礼、成育儀礼
葬儀(10年に1回の計算、年収の1/4)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文(心理・歴史・思想)
感想投稿日 : 2023年9月9日
読了日 : 2023年9月9日
本棚登録日 : 2023年9月7日

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