「三月は深き紅の淵を」何とも詩的でぼやっとして近寄りがたい雰囲気さえ感じてしまう不思議な書名に魅かれました。
四つの章から構成されていますが、この本の中にこの本と同じ本が登場して、その中でまたストーリーが展開してとややこしいことこの上ない作りです。でもなかなかに楽しめました。第一章と第二章は恩田さんらしくグダグダの世界。ただ、受ける印象は随分と違いました。私的にはいつか乗ってみたい寝台列車の雰囲気を存分に味わえる第二章がより好きです。これは、恩田さんの取材の賜物でもあり、それは第四章で明かされます。そして、第三章は少しキリッとした世界観の学園もの。最後の場面は想像すればするほどにとても切ないものがあり、強く印象に残りました。
それにしても共通の本のことを題材にこうも全く違う世界が展開するというのも凄いと思いました。
ただ、問題は第四章です。異物感満載。どうしてこんなものがここにあるのだろうかと戸惑いました。いきなり恩田さんが目の前に登場して語り始めたかのような世界。恩田さんの小説に対する考え方や生活風景がおぼろげに見えたりでこれはこれでとても面白いです。そんな中に突如、理瀬登場。実のところ理瀬については「麦の海に沈む果実」を読もうとしたら、順番はこちらを先に読むべしという何かの記載を見てこちらにしたのですが、う〜ん、何だか分かったような、分からないような不思議な物語が展開しました。この順で良かったのか?これはもう「麦の海に沈む果実」を続けて読むしかないですね。逆にそちらを先に読まれた方もいるようですが、どちらを先に読むのが正解だったのかは「麦の海に沈む果実」のレビューで書きたいと思います。
いずれにしても第四章をどう捉えるかで評価が大きく分かれる作品だと思いました。
- 感想投稿日 : 2019年12月11日
- 読了日 : 2019年12月11日
- 本棚登録日 : 2019年12月9日
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