ネバーランド、この名前で思い浮かぶのは故マイケル・ジャクソンの自宅が有名だと思いますが、Wikipediaでは、『ピーター・パン物語に登場する架空の国である。親とはぐれ年を取らなくなった子どもたちが妖精とともに暮らす。』と書かれています。う〜ん、何だかこの作品にぴったりだと思いました。
『学園生活はバランス感覚が全てだ。いったんクラスの中における互いに割り振られたキャラクターを了承しあってしまえば、あとは約束された毎日を過ごしていける。』微妙なバランスの上に成り立っている学校生活、会社と違って発令上の上下関係があるわけでもなく、閉ざされた中に多種多様な価値観がぶつかり合う世界。人によって印象は違うかもしれませんが、この世界を生き抜くことはそうたやすいことではありません。そんな学園の冬休み。みんなが去って4人だけが学園寮・松籟館に居残ります。同じ場所なのに4人になってバランス感覚が全く変わってしまったことに戸惑う彼ら。4人の世界での人間関係作りの模索の日々が展開しました。
これはミステリーではありません。謎解きも一応あり、しかも片方は二段オチです。でも最初のオチは流石に読者からのクレーム殺到必須の無理筋。もう少し納得できるようにしたという感じで二段オチとなるのですが、それでも超おまけという感じ。でもそんなことどうでも良いのです。この作品はそこではありません。
『誰かの秘密を聞いたことで、自分の秘密も話さなければならないような義務感が心のどこかに生まれてくる。』告白か実行か。想像の上をいく告白内容に戦慄が走ります。ここまで重苦しく重量級の内容が彼の口から話されるとは思いませんでした。自身があの場所にいたとしても、それを聞いて言葉を返すことができるのだろうか、ただただ驚愕しました。でも、そんな重い雰囲気を和らげるのが酒とタバコの印象でしょうか。高校生ってみんなこんなにも自然にグビグビ、プカプカやっているのかという呆れの感情も入って、トータルで重さが緩和される感じです。そして、こんなに語り合って、語り明かして、全てが懐かしい想い出になるんだろうなという全てが決着するエンディングが訪れます。
甘酸っぱくてほろ苦い、でも、物凄く爽やか、物凄く青春、そしてそこから輝く未来が垣間見える終局。恩田さんの学園ものの傑作と言える作品でした。
- 感想投稿日 : 2020年2月12日
- 読了日 : 2020年2月11日
- 本棚登録日 : 2020年2月12日
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