六番目の小夜子 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2001年1月30日発売)
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本棚登録 : 17027
感想 : 1711
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表紙のなんとも言えない一種の不気味さに逆に興味がわいてどんな作品なのだろうかと読み始めました。舞台となる高校に伝わる奇妙な伝説。このこと自体に違和感を感じないのはどこの学校でもこの作品ほどではないにしても何らかの伝説、噂の類があるものだからでしょうか。しかし、この作品の伝説は生きたものであり、誰かがその生きた伝説を現在進行形で演じ続けているという事実が不気味さを深めていきます。ホラー小説一歩手前の世界観も描かれて一体どういう結末を迎えるのかハラハラさせられました。主人公それぞれの性格がよく描き分けられ、卒業を前にした学園生活も垣間見える中に描かれるホラーな世界。同じく卒業前の学園生活を描いた「夜のピクニック」では学園生活の中の一つの非日常としての歩行祭という伝統が作品の全てでしたが、この作品ではそれが学園祭を頂点にしたサヨコという伝説が全て。同じ学園生活を描いても見事に違う世界観を楽しませていただきました。
ただ、疑問点がそれなりに残った分、「夜のピクニック」の読後感とは随分差がありました。自分の想像力によってこうだろうとかなりの部分は落としこめたのですが沙世子が男子学生たちを河原に導いた部分だけは、どうしても納得感のいく答えが見つからず、この点モヤモヤが今も残っています。まあ何でもはっきりすれば良いものでもないでしょうし、これはこれで良いのかなぁとも思うことにします。
それにしても恩田さん、デビュー作から恩田さんなんだなぁと思いました。楽しませていただきました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恩田陸さん
感想投稿日 : 2019年11月28日
読了日 : 2019年11月24日
本棚登録日 : 2019年11月22日

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