夜のピクニック (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年9月7日発売)
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本棚登録 : 48612
感想 : 4001
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恩田さんの作品二作目に読んだのがこちらでした。先に映画を観てどうしてこの作品が本屋大賞を受賞するような作品なのかと思い読むことにしました。
読んでみて驚いたのは、映画が非常に忠実に原作をなぞっていたことでした。その事実から感じたのは、この作品では本という文字だけの媒体の方が、映画という映像と音楽を駆使した媒体よりもはるかに多くの情報を持って迫ってきて、自分自身が融や貴子と一緒に歩行祭に参加しているかのように感じさせられたことでした。映像よりも活き活きとした世界を描きだす文章のマジック。これは凄いと思いました。80キロ歩くなんてとんでもない距離ですが、彼らと一緒の一昼夜の時間はとても楽しかったです。映画ではすっかり浮いた存在だった光一郎も原作ではぐんと魅力を増して、より歩行祭を盛り上げてくれましたし、忍と美和子にも原作の方が俄然魅力を感じました。映像と音楽を駆使しても全く足りなかった映画の情報量が後から本を読むことによって補完され、あのシーン、このシーンの意味が後から肉付けされてくる、なんとも不思議な気分でした。

たった一昼夜のただただ歩くだけの時間が、こんなにも美しく輝くなんて。
素敵な作品に出会えて良かったです。

爽やかな読後感を味わせていただいた素敵な一冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 恩田陸さん
感想投稿日 : 2019年11月25日
読了日 : 2019年11月21日
本棚登録日 : 2019年11月21日

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