グラスホッパー (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2007年6月23日発売)
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本棚登録 : 49896
感想 : 3654
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「777」が新書で発売され、殺し屋シリーズを最初から読んでみようと思い購読。

最近伊坂さんのポップでセンス抜群の文体にかなりはまっている。

作品は鈴木、鯨、蝉の三人の人物を主軸に物語が展開されていく。
例によって登場人物は極めて異端な人物達で、ダークな世界観をポップとまではいかないが軽快に重くなく描ききっている。疾走感も凄く、そして途轍もなく奥深い作品だった。

読み終わった後で「?」が…
自分で読み解いてみても「?」が多すぎて、色んな推測をたてて考察してみた。更にGoogleで検索して考察している人達の文章を読み漁った。結果色んな人が多種多様の解釈している事にビックリ。
文学ってやっぱり読んだ人が感じる物に統一性が無くてもいいこと、すなわち最終的には読者の感受性の物なのだなと改めて理解。

この作品の登場人物の名前も気になった。
鯨は深海と海面(幻覚と現実)を行き来して深海(幻覚)に沈む。
蝉は逆で現実だと思っていた土の中から岩橋を失い(成虫して)、幻覚(土の外の世界)も知りその成虫した短い命をとげる。
槿(朝顔)の花言葉は調べてみたら「あなたに絡み付く」だそう。だから槿が寺原長男を押した時に信号の点滅(幻覚の予兆)と共にストーリーが展開されていく。鈴木も鯨も蝉も全員が絡まりはじまる訳か…

最後、鈴木が反対車線のホームに見た少年二人が最終的に全てをほどいてくれたのか?
この劇団の狼少年二人。
その時回送電車が通りすぎる、目覚めの前兆、絡まった今までの回想、回想電車?引き込まれそうになりながら「バカジャナイノー」の声。
鈴木自身へ…寺原長男への復讐の為に教員を辞め、その行動と労力と時間も含めその言葉を言っているのか?
自分の人生を妻の死のきっかけで方向転換させた鈴木に向けて。この少年二人は実は鈴木と妻の間に生まれてくるであろう子供達だったのではないのか?そんな父親に向け大声で拙い声で「バカジャナイノー」なのかも?
それとも「生」と「死」、どちらにも足を踏み込める状態での幻聴の最後の救いの声だったのだろうか…
それとも生きていこうと決意した鈴木に対して「あなたは馬鹿ではないよ」ってこの先がんばれってニュアンスで幼い子供達が叫んでくれたのかな?

この作品は伊坂さんの数ある作品の中でも人気で、作者には答えはあるのだろうが、人気なのは読者がそういう多様な考え方ができる作品だからなのだろうと感じた。
このあと、「マリアビートル」「AX」期待して読んでみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月29日
読了日 : 2023年10月29日
本棚登録日 : 2023年10月19日

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