ゴールデンスランバー (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2010年11月29日発売)
4.14
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5

2008年本屋大賞、山本周五郎賞受賞作品。約15年前の作品。

680ページの超大作、物語はケネディ暗殺事件をなぞらえながら、主人公青柳がオズワルドとして犯人に仕立て上げられ、その闇が闇すぎてそれでも無実だからこそ逃走するストーリー。

この作品の中には色んな物が含まれており、途轍もなく奥深い作品だった。
「1984」ビッグブラザー然り、ケネディ暗殺事件のオズワルド然り、ビートルズ末期のポールマッカートニー然り。

そして主軸は逃走と共に関わってくる人々と想起追想してくる青春時代の遠い記憶が織り交ざる所。
森田、樋口、カズ、轟、岩崎、そして両親。青柳本人を知る人々が今現在の彼が当時と変わらない本質の彼であるとして見ている目が全くぶれない。それは青柳本人の目も同様にぶれておらずお互いにぶれてない。彼らが今までの人生で普遍的に積んできた徳というか人間力がそうさせている。そしてそれが「習慣と信頼」という言葉に集約されている、素晴らしい。

最後の親に宛てた「痴漢は死ね」
晴子の娘がくれたスタンプ「たいへんよくできました」
秀逸すぎる。

読後、再び第三部「事件から20年後」を読んでみたが色んな真相が明らかになっておりトリックの種明かしのように感じる。読んでいる最中はあまり気付かなかったが、改めて振り返って省察すると作品の構成力が半端ない。
そして新潟の森田の墓の描写等から、この第三部は青柳本人が書いているのでは?と推測、希求してしまう。
ジャーナリストとして20年後もこの事件を追っているのだと。事件当初から思っていた青空が場所も時間も超えて繋がっているのだと。
そうであってほしいし、自分はそうと読み取りたい。

伊坂さんらしく突飛な物語、独特のユーモア満載のテンポの良さ。そして「重いのに軽い」、「軽いのに重い」の不思議な絶妙なバランス感。
最高の作品、さすがは受賞作品。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月9日
読了日 : 2023年12月9日
本棚登録日 : 2023年12月1日

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