影踏み (祥伝社文庫 よ 5-1)

著者 :
  • 祥伝社 (2007年2月1日発売)
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本棚登録 : 3647
感想 : 353
5

15年以上前の作品。
なんだか変な感じになるが現代の詐欺事件や闇バイトとかの時事を見るよりもこの主人公の様な泥棒の方が親近感を覚える。
一つの動機に対して自分自身(個人)で完結するからなのかと思う。勿論泥棒を稼業とする事は断固否定するが。

作品自体はとても面白く、知らない言葉や聞いた事はある、今までは意味をそこまで理解しようともしない言葉が多く出てきて勉強になった。
単に泥棒にも色んな種類があり、その種類の数だけのやり方があるのも知った。
頭をひねって「防犯」に重きを置き換えて読めば防犯の啓発本にもなりそう。

作品は「愛」がテーマ。
真壁は泥棒を稼業としてはいるが、それは過去の一家心中の過去からの流れで、それが「影」となり本人の意志ではないのだろうと推測。
死んでしまった双子の弟が影であり、分身の様な影が夜の世界では自分も影のような存在になれるからなのかと。

久子とのラブストーリーも秀逸で言葉にはないがしっかりとした深い愛情を見ることができる。
不器用といえば不器用だが一昔前の男らしいハードボイドな格好良さが素敵だった。

真壁と久子の今後が気になる所ではあるが、そこは完結せず読者に投げ掛けるように終わるところも秀逸だと自分は感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年6月25日
読了日 : 2023年7月3日
本棚登録日 : 2023年6月20日

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