大正四年、北海道で実際に起きた、ヒグマが次々と人を襲う事件。あまりに有名なので、事件の存在は知ってはいたが、その事件のことを描かれた此の本を読むと、その生々しさは想像以上だった。
羆一頭じゃないか、と現代人の感覚なら思うだろう。簡単に、駆除できるのではと想像するだろう。しかし、当時、武器を手にした男たちが二百名程集まろうが、それでもこの羆の圧倒的な力に抗うことができなかったのだ。大勢人が集まろうが、鎌や錆びた銃を持っていようが、深傷を追わせることすらできないのだ。
冬の夜、この本を読んで、寒さの中の、暗闇での混乱を、リアルに想像できた。
自然というのは、とても怖い。人が勝手に「うまくこの土地に馴染んだ」と思っていても、自然は前触れもなく手の平を返す。そして、曲げられないその条理こそが、畏れだったり尊さなのだと思う。
羆と戦ったひとがいた。畏れを抱きながら。その話を書いた本書。…私は、この本を読めてよかった。
そして、是非、倉本聰氏によるあとがきも読んで欲しい。
その後の、色々な「運命」に、胸が熱くなることだろう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年1月3日
- 読了日 : 2023年1月3日
- 本棚登録日 : 2023年1月3日
みんなの感想をみる