『雪娘』は、なんとも悲しき孤独な犯罪者だ。
淡々と徐々に語られる思い出と今の感情。罪は結局自ら罰を受けに行くようなものなのかな。
『オモチャ』は、宮部みゆきさんの書籍は初めてだったので驚きましたが、『雪娘』同様に心霊も出てくるのですね。とはいえ、子供も心情が可愛らしくて、怖いというより優しさを感じてしまいました。
『チヨコ』は、もしかして怖い話なの?と、ドキドキしながら読み始めたけど、あったかい話でした。個人的思いを馳せると一昨年永眠したウサギを忘れられずにいる私自身、誕生日に娘がくれたウサギのぬいぐるみをあの仔のつもりで毎晩一緒に寝てるくらいのイタイおばさんなので、尚更感情移入するわけだ。
ゆるい主人公が友人に半ば騙されたような形で引き受けることになったキグルミの中の人のアルバイト。始まってみれば、不思議なことが起こる。読みながら共にワクワクする事必至。
『いしまくら』は、娘1人と妻と暮らす編集者が娘に引っ張られる形で不思議な噂の真実を見つけに行くことになる。
そこに、父親としての娘への思いだったりが差し挟まれながら進行していく謎解きが面白い。
『聖痕』は、語り部の職業も性別も認識しないまま読みだしたので、読みながら、ああ女性なんだな。何か子供に関わる調査の仕事をされているんだなと察しながら、来客の話を一緒に伺うような展開。
語り部の感想というか視点での観察は多くはないので、それが私のような鈍い読み手には
「何が始まり、どうなっていくのだろう」とざわざわ読み進めることになる。
結末は私的には、正直「え?どうゆうこと?」と、我ながら読解力の無い自分にガッカリするのですが、他の方の感想も追いかけて理解したいと深掘りしたくなる話でした。
最後の解説で知ったのですが、本書はかなりマニアックな著者が選ぶ短編集とのこと。
確かにどの話も展開が読めなく比類無く面白かった。
- 感想投稿日 : 2023年7月23日
- 読了日 : 2023年7月23日
- 本棚登録日 : 2023年7月23日
みんなの感想をみる