図書館で借りた。初読みの作家さん。
表紙のパンと、中の空と建物の写真が、佐内正史さんの写真だと気付いて嬉しくなった。写真集持ってたから。
ストーリーからこぼれる会話が人生を作るのだ。
という台詞がとても良かった。
魚卵は食べられるために存在するんだよとか、
ハムスター飼い始めて名前何にするかっていう話とか、
仕事用デスクでミニトマトを育て始めた同僚とか、
栄養なんて、愛とかサンタクロースと同じで幻想ですからねとか。
津留崎に広田「そういう気持ちの中で転職したのに、仕事を覚えるの早いし、真面目に残業していて、すごいです。」
こんな事言ってもらえたら嬉しいだろうな。
その他印象に残った所
•水に映る花と、咲いている花と、どっちが本当の花か、あまりわからないなあ、と考えた。
匂いがする方かな。
•人が髪をいじる時、いじる前といじった後では、まったく違っていると本人は思っているものと思われる。
しかし傍目にはまったく変わらない。
それと同じように、人は咳ばらいをする前と咳ばらいをした後ではまったく声が違っていると本人は思っているようだ。
しかし傍耳にはまったく変わらない。
「ああ、懐かしの肌色クレヨン」の女性は、言葉から、とても素敵な女性だと感じる。こんな風に気持ちを伝えられて嬉しくない人はいないと思う。
でも山田はちっとも良い男性には思えない。自分で誘った美術館でチケットは自分の分しか買わない、好意を伝えられたのにイエスともはっきりノーとも言わず良い人のままでいようとする。
ドキドキハラハラするような大きな展開はないけど、日常に埋もれそうになる、時間が経てば忘れてしまいそうな他愛のない会話を書き留めた、心穏やかになる本でした。
- 感想投稿日 : 2024年2月2日
- 読了日 : 2024年2月2日
- 本棚登録日 : 2024年2月2日
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