こころの読書教室 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2014年1月29日発売)
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本棚登録 : 434
感想 : 39
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臨床心理学者として河合先生は、患者さんが直っていく過程はその人のならではの”物語”を自ら獲得していくことであり、医者は隣で話を聞いているだけだと述べられていた。

本書は児童文学から学術書まで、多くの書物を通じて人の心の働きを読み伝えようとしたもの。優れた文学作品が人の心の深い動きに触発され、登場する人物の”物語”を伝えるのであれば、そこに人の心の働きを読み解く鍵が存在しているはず。

我々が通常生活の中で意識できる自我、その背後に存在する無意識の領域(エス)、この総体として人の心がある。心の扉の向こう側の無意識の世界は、時に開かれた扉から顔を出す。夢の中で無意識に自覚される事象に、心の奥深くの世界を求めたのは、ユング、フロイトをはじめとする心理学者でした。

心理学の前提なしに描かれた文学作品が、奇しくも実際の患者と類似点が見られるというところは大変面白い。

紹介される書籍を読んでいなくとも、河合先生の平易な語り口調から、いかに人の心の深い部分と関連しているのか良く伝わってきます。このような視点から未読の本を深く味わうのもまた別の楽しみでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心理
感想投稿日 : 2014年5月6日
読了日 : 2014年5月6日
本棚登録日 : 2014年3月16日

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コメント 2件

honno-遊民さんのコメント
2014/05/24

とても、興味あるテーマです。レビューを見てさっそく、読んでみたくなりました。

8minaさんのコメント
2014/05/31

hongoh-遊民さん、こんにちは。

身近なところでも、いろいろなこころの問題を抱えたケースに遭遇します。こころテーマは私自身も興味があり、河合先生、香山リカさん始め、社会、子供、環境、へと広がってきました。きっかけと直っていく過程をもっと深く考えてみたいのです。

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