紀ノ川 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1964年7月2日発売)
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本棚登録 : 824
感想 : 95

明治時代に和歌山に生まれ育った花を中心に、子の文緒(大正)、孫の華子(昭和)を通して、時代の移り変わりを描いた作品。
私の義実家は和歌山なので、話言葉や食べ物(駿河屋のまんじゅう、富有柿)、地名(岩出)和歌山城やぶらくり町が聞き覚えがあるもので、読んでいておもしろかったです。
私は強い女性の話が好きなので、この小説は大好物でした。
主人公の花は明治時代の女性の見本のような、夫をかいがいしく世話するように見えて自分の野心のために動かすような女性(に見えました)。
その母を反面教師とした文緒は、「女性でも自立していく時代だ」と大口を叩きながらも、実家のお金を頼りにする女性。
孫の華子は、花の隔世遺伝を受け継いでいるような女性。花に親しみを感じ、受け継がれてきたものを客観的に見ています。

女性が直接的に社会に出ていないながらも、家の中のやりとりを通して、間接的ながらも社会に貢献してきたこと、こまごましたやりとりを通して考えが次世代に繋がっていくさまが描かれていておもしろかった。

「原始社会の母系家族は自然やったんやと思いませんか。いざとなって頼るのは、男の家やのうて、女の実家方ですよ。」
紀本家の豊乃から、花へ、そして文緒から自分へと確かな絆が力強く繋がれて、花の胸の鼓動が直に華子の胸に響いているのを、華子は感じたのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年2月24日
読了日 : 2024年2月24日
本棚登録日 : 2024年2月23日

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