ハチ公の最後の恋人 (中公文庫 よ 25-2)

著者 :
  • 中央公論新社 (1998年8月18日発売)
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本棚登録 : 3654
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 忘れられないエッセンスを閉じ込めたようなお話でした。

 「孤児みたいになって。なにがあったのかと思わせる育ち方」をしているように見えるマオと、育った土地インドに一年後帰る、自分を知って生きているハチとの生活はどれも『この一瞬を生涯忘れませんように』と願いたくなるほど澄んで見えました。

 些細なことの全てに対してもう2度とこんなことはないと自覚してしまうことが、人生の絶頂と感じる最中にはあると思います。そんな満ち足りていくらでも自分が明るい方へ伸びていけそうな時間をマオは「こんな時間が少しずつ増えていって、私はハチを忘れないが、忘れるだろう。悲しいが、すばらしいことだ。そう思う。」としています。私はまだそんな風に美しかった時間を解放することが出来ませんが、いつか運命を悟ったり身を委ねきれるように生きられる日がくればいいなと思いました。

 この本はひらけば何度でも幸せな生活とすてきな未来を思い出させてくれると思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年11月25日
読了日 : 2020年11月25日
本棚登録日 : 2020年11月25日

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