もし本当にファンタージエンと人間の国を行き来できた子どもがいたとして、ファンタージエンでの出来事を話してくれたときに、「くだらん」とか「どうせ夢だろ」とか言うつもりはもともとなかったけど、「忙しいから後にして」って言っちゃうかもしれない。
バスチアンの父や古本屋のオヤジの対応にはハッとさせられるものがあった。私はバスチアンの父と同じくらいか、あるいはそれ以上の年齢になってしまったけど、まだ古本屋のオヤジよりは若いはず。間に合ってよかった。
冒険物語というよりは文化人類学のフィールドワークってこんな感じかなと思ったり、ドイツで1979年に発行されてから3年で日本で発行した翻訳者、世界観を見事に再現している装丁や印刷会社の仕事ぶり…やっぱ岩波すごー、さすが広辞苑の会社…と思ったりしたのは、大人になってから読んだ気づきだったと思う。
グラオグラマーンのセリフに、転職を思いとどまったりもした。大人の心にも響くセリフの数々。恐るべし、ファンタジー。大人もファンタジー読んでいいと思う。当たり前なんだけど、それを再認識。
重いので通勤のお供にできず、家でちょこちょこ時間を作っては読んでいて、1ヶ月かかってしまったけど、やっぱり文庫版にしなくて大正解だった。この本はどんなに重くてもハードカバーじゃないと意味がない。「あかがね色」といい、蛇の紋様といい、文字の二色刷りといい、物語そのものを再現していて、もう特別感がハンパない。
この本を今更読もうと思ったきっかけは、先月積読解消で読んだ雑誌『&Premium2022.10月号』にあった「まだ読んでいなかった児童文学の名作を読んでみた」というコーナー。
かつて姉の本棚にあった『はてしない物語』のずっしりとした重みや、絹張りの手触りはすぐに蘇ってきたものの、どんな話だったか思い出せない…あらすじを読んでもピンとこない。ということは、読んでいなかったんじゃないか。もしかしたら途中で挫折したのかも。
他にも読みたい本はたくさんあって、正直こんなことをしている場合じゃない…と思いつつ、どうしても気になる。そうして図書館から取り寄せた。読み終わった今から考えると、ファンタージエンから呼ばれた…ということにしておこう。
ただ、残念ながら図書館はケースがついてないし、ビニールのカバーがかかっていて質感を存分には楽しめない…。でも、中の装画も素晴らしいし、これはもう芸術品!と読む前から感動。子どもたちも読むかもしれないし、そのうち買いだな、と思っている。
ちなみに、芸術品という感想ついでに、中学生のときに取り組んだ「読書感想画コンクール」のことも思い出したりした。友人がミヒャエル・エンデの作品で何かの賞をもらっていたので、「なんの本だったっけ?」と連絡をとってみたら「『モモ』だったよ」とのこと。『はてしない物語』を感想画にするとしたら、絵巻か壁画になっちゃうよねとか、児童文学の話にも花が咲きまくって、めちゃくちゃ楽しい時間を過ごせた。これもファンタージエンの魔法かも。
映画の『ネバーエンディングストーリー』も見たことはないけど、見てしまうと自分の中の世界観が崩れそうなので、やっぱり本は本として自分の中で大事にしたい。
- 感想投稿日 : 2023年9月26日
- 読了日 : 2023年9月23日
- 本棚登録日 : 2023年9月23日
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