ロリータ (新潮文庫)

  • 新潮社 (2006年10月30日発売)
3.79
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本棚登録 : 3917
感想 : 327
4

星4.5かな。
第1章は、少女マンガと同じで、セックスに至るまでは面白い。ロマンスだからか。大江氏がいうようにそれぞれのシークエンスが劇的だ。
それ以降はリアリズムだ。「絶望的なまでに痛ましいのは、私のそばにロリータがいないことではなく、彼女の声がその和音に加わっていないことなのだと。」下手に手に入ってしまったがゆえに保守的に失うことを恐れる。ただ、そこにいてくれるだけで幸せだったのに。
第2章はカポーティの「冷血」っぽい。
でも、カポーティよりはるかに心理をえぐっていて好き。カポーティのドライな文章は一つの魅力だけど。
第1章で、すぐにロリータを手籠めにしようと画策せず、近所を収めたハンバートが、当てもない全米旅行という逃避行に出るのは妙。ロリータを手に入れたせいで舞い上がったといえるかもしれないが、その後いくらでも、一か所に身を固める機会はあったはず。
第3章でまともに身を固めに入る。「仮面の告白」っぽいね。殺人に至る動機が弱いのではないか。
ハンバート射精~母親の死亡~性交~第1旅行~学校~第2旅行~喪失~リタ~再開~殺人。がそれぞれに急速かつ十分。流れを持った小説だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学
感想投稿日 : 2014年3月8日
読了日 : 2014年3月11日
本棚登録日 : 2014年1月13日

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