企業参謀―戦略的思考とはなにか

著者 :
  • プレジデント社 (1999年10月29日発売)
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10年以上も前に書かれたとは思えないクオリティの大変素晴らしい本。大前研一氏の完成度と洞察力をもってして生まれた本。名著以外の何物でもないと思う。素晴らしい。

名言
・理想を頭に描くことで、制約条件が理想に向けての障害物に変わる。

・ラインの短期利益追求から中期的利益の追求へ。
・スタート時点で大切なこと「設問のしかたを解決策志向的に行うこと」そもそも論を問いにしてみる。どうしたらよくなるかではなく、そもそも人は足りてるのか、そもそも仕事の量と質に人材の能力がマッチしているのかなど。
・問題点の絞り方を現象追随的に行うこと。ブレストなどで現象摘出→同類項をまとめる。→さらにまとめ共通する問題点をさがす。(「抽象化プロセス」)これを行わないと、Q&Aの短絡した表層的な解決にしかならない。現象の問題点が何に帰属する問題であり、何に深い関わりあいがあるのか。これを理解しないと新の解決策はない。
本質的問題解決のプロセス 現象→グル―ピング→抽象化→アプローチ設定→解決策と思われる仮説設定→分析により仮説の立証・反証→結論の導出→具象化→実行計画立案→実行
・中期経営計画戦略立案プロセス 
明確な目標値の設定→基本ケースの確立(現状そのままやるとどうなるか)→原価低減改善ケースの算定(コスト改善ケース)→市場・販売改善ケースの算定→戦略的ギャップの算定(オペレーショナルな努力の限界値と目標値の差)→戦略的代替案の摘出→代替案の評価算定→中期経営戦略の実行計画
※どんな仮定を置いているかは明確にすることが必要
→その部分のみを変更して処理できる。
 ・戦略的代替案例①新規事業参入、多角化②新市場への転出、海外市場など③上方、下方へのインテグレーション(垂直統合)石油だと情報は輸送、採掘、下方は有機合成化学、ガソリンスタンド
④合併・吸収 ③のためや製品系列の拡充、マネジメント強化など
⑤業務提携 販売網共有化、部品共同購入、技術提携など
⑥事業分離 別買者設立による専業化による効率経営
⑦撤退、縮小、売却 事業の切り売り、退却、全体のために部分を放棄する
ワクを狭くすると抜本的戦略が出てこない・広げるとリスク現実性が発散する。称事業部からバラバラに出てきた寄せ集めはだめ。
・SBU事業戦略ユニットを作る際はKFSを共通項として構成するべき。
・多角化は多様化、新市場、地固め以上に必要な時に初めてするべき。
・製品、市場戦略策定のためのプロセス
①市場性の動的把握(市場のサイズと動態、成長性を知ること)→②内部経済の分析(売上高、前者に占める割合、限界利益、商品別限界利益→傾向とその理由の把握。損益分岐点、付加価値分析→どの工程の付加価値が高いか。)→③競合状態の把握(商品サイズ別のシェア)→④KFSに照らしたわが方の強さ、弱さの客観的理解→⑤改善機会について仮説の抽出評価→⑥改善実施計画作成、実施→⑦モニター、必要な軌道修正
・戦略実践時には具体的なタイムスケジュールの作成が大事。
 思考力を極限まで用いて、相手の動きを予測して戦略を立案する。
・参謀五戒 ①ifという言葉に対する本能的恐れを捨てよ。
 ②完全主義を捨てよ。相手よりほんの一枚上をいく戦略をタイミングよく実施することが勝利のカギ。③KFSについては徹底的に挑戦せよ。常にKFSが何であるかという認識を忘れない。全面戦争ではなく、KFSに対する限定戦争に徹底的に挑む。④制約条件に制約されるな。理想を描くと制約が障害に変わり、どう取り除けばいいかを考えるようになる。⑤記憶に頼らず分析を。しょうがないことを週1つ取り上げて、自分ならどう「しようがある」ようするかという策(概念)を展開してみる癖をつける。
玉石混交の問題。
負け戦をしているのに、ホッケースティックで「善戦している」と通報すると誤った判断に陥ってしまう。⇒妥当性の検証が重要。善戦からの情報に常識のスクリーニングにかける。
高速道路の鹿
早く走ると視野がどんどん狭まってしまう。経営者はごめんなさいを言った後の状況の方が、破局に至った後の断頭台よりいいと考えないといけない。
日常生活における絶え間ない空想力と、論理を組み立てる訓練に裏打ちされたものでなければならない。
製造の中心が移っているのであれば、そこに資本を投入しておくべき。
低成長⇒判断ミスの融通性が失われてきた。分析を重視し、個人の情や勘の入る余地を
少なくして、分析に携わった全員の責任になるようにする。
財力が強い会社の特徴
①安定したプラスのキャッシュフロー②外部資金調達能力が高い③自己資金比率が高い
市場競争力の強い会社の特徴
①市場占有率が高い②コスト管理がうまい③生産体制に柔軟性がある④特殊技術や独自の販売網を有する
競争相手との相対的力関係を変化させる方法
①経営資源配分において、相手より濃淡をつけ、シェア収益性で優位にたつ。
KFSに基づく企業戦略
②競争条件が違うため優位に立つ 技術、販売網、収益、資産内容の相対差
相対的優位性に基づく企業戦略
③新機軸を貫き相手に追従させないことで優位。
新機軸展開による企業戦略
新機軸を求める方法
①考え方の転換②戦略的自由度③技術的ポートフォリオ
①常識を疑い、疑問に結び付ける。
最も本質的とされている仮定を列挙し、仮定が依然として正しいか、仮定がなければ事業が成り立たなくなるのか考えてみる。
戦略立案の底流となる思想
①戦略的に意味のある計画はひとたび目的地に達した場合、守りぬけるものでなくてはならない
(プロテクション)
②いかなる勇者といえども、市場の構造変化を予知し、対処するために己の強さと弱さを常に知りぬいていなければならない。
③真の戦略家はリスクを避けるのではなく、リスクをあえてとる局面がなくてはならない
④最後に戦略に魂を吹き込むのは人であり、マネジメントのスタイルである。
先見性の四つの条件
①事業領域の定義が明確 
②現状の分析から将来の方向を推察し、因果関係について、きわめて簡潔な論旨の仮説が述べられている
③選択肢のうち少数のみが採択されている。
④基本仮定を覚え、状況が変化した場合を除き原則から外れない。
世の中の力の動きを見通し、提供すべきものを考えるヒント
①自ら定義した事業領域で対象ユーザのトータルエコノミクスを徹底的に分析する
②サービスでは時間、手間、便利さの分析
既存のものをなるべく活用。規模の経済の閾値以上に一気にもってく
③既存システムの存立要因を理解し、これを揺さぶるか活用する。

先見性のある経営者なら、自分はどのような顧客のためにどのようなサービスを提供し、
どのようなメカニズムで収益をあげているのかを忘れない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経済・経営関係
感想投稿日 : 2012年2月5日
読了日 : 2012年4月3日
本棚登録日 : 2012年2月5日

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