日はまた昇る (岩波文庫 赤 326-1)

  • 岩波書店 (1958年9月25日発売)
3.55
  • (10)
  • (18)
  • (28)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 210
感想 : 16
5

外形の描写に終始した淡白な文体であり、登場人物の心理はちょっとした仕草やセリフから読み取るしかない。直接的でない表現であるからこそ、読者はその背景にあるものを積極的に想像しようとし、自分自身を立体的な像として登場人物の中にみることになる。

ブレットに恋をしつつも性的不能であることからくる無力感をどうすることも出来ずにいるジェイクが、闘牛の中に求めているものはやはり戦争そのものなのだろうか。ロメロのように闘牛士としてその場に立つことは不可能であり、その疎外感がナルシシズムに転化されている。去勢牛とジェイクが重なる。失われたものを取り戻すことは出来ないのだ。しかし、だからこそ、その若者の姿が胸を打つ。

以前読んだ高見浩訳の『武器よさらば』では、風景描写がなかなか頭に入ってこなかったためにヘミングウェイを避けていたが、その印象が塗り替えられた。とても読みやすかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年2月3日
読了日 : 2020年2月3日
本棚登録日 : 2020年2月3日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする