銃口 (下)(小学館文庫) (小学館文庫 R み- 1-2)

著者 :
  • 小学館 (1997年12月5日発売)
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上巻に続き下巻を読了。

激動の昭和を生きていく竜太。戦争の足音が近づいてくる最中にもたらされた通知、赤紙。
芳子との結婚も間近なのに出兵せざるを得ない竜太。

<北海道綴方(つづりかた)教育連盟事件>1940年から41年にかけて北海道で起きた思想弾圧事件。 日常生活をありのまま表現させる綴方(作文)教育を実践した教師らが「子どもたちに資本主義の矛盾を自覚させ、階級意識を植え付けた」とされ、治安維持法違反容疑で大量に逮捕された。

上記は引用文だが、この事件でも竜太には大概にして濡れ衣であり、7ヶ月という拘留生活を経て、保護観察下とは言え釈放された後に出兵。

どこまでも同じ日本で起きた出来事とは思い難い話ではあるが、史実は史実。

三浦文学の要素が詰め込めるだげ詰め込んだ作品、そんな風に感じた。事実、この作品が著者最後の長編小説らしい。すべからく納得できます。

“愛”とは、“赦し”とは、“神”とは。

クリスチャンらしい疑問を投げ掛けるあたり、作風はいつも通り。しかし、細やかに人物像や背景を変化させることで、どの作品も別物として読める。何より読みやすいのが有難い。

真面目なテーマながら、ホッコリしてしまうところも織り交ぜて進むストーリーには、惹き込まれる以外の手立てが無い。

稚拙な感想しか出てこない自分自身が情けなくなるぐらいです…。

良い作品に出会えました。

竜太や芳子の様な夫婦が、後の世に大勢現れてくれることを切に願いたい、おっちゃんはそう思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年2月21日
読了日 : 2024年2月21日
本棚登録日 : 2024年2月21日

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