おっちゃんの推しの作家さんの作品。
久々に市川作品を読もうかと意気込んだ直後、明らかなる違和感を感じた。
短編三作品からなる本書、まずは“琥珀の中に”。
読み出して30分後には異変警報が(笑)
市川作品にしては、今作やたらと男女の絡みシーンが描写されている。そして現れる死体、さらにはレジン詰め…。市川作品には見られないストレートな表現も多く、これは穿った見方で攻めてきた作品かなと思った。
絡みはともかく(とはいえ著者としては、表現がリアル。見たことが無い)死体周りには、乙一的な雰囲気を感じた。
一つ飛ばして“循環不安”。これもストレートに死体を出してきた。小さな世界を目指し、その中でも静かに・綺麗に・そして優しく紡いで行く…みたいな作品を繰り出す著者なイメージを覆す内容。
「何か嫌なことがあったのですか?」
と聞きたくなるぐらい真逆なストーリー。ここにも乙一的な雰囲気を感じた。ハラハラもした。犬、そういや…でしたな。
最後に“世界中が雨だったら”。これは市川作品らしいストーリー。でも、少年が未遂とはいえ九分九厘、自殺を決行するという姿勢を貫くってところは、やはりイメージと違うと肌身に感じた。
姉との関わり方は、著者らしさが出ていた気がする。おっちゃんはそんな雰囲気が好きです。
つらつらと書いているが、三編どの主人公の男(琥珀の中には違うかな)にも共通してあるハンディキャップ、自分に自信が持てない、引っ込み思案、優しいが故の奥手、これらの要素を持たせているところには、市川作品ならではなものを感じた。むしろその設定こそ真髄かと。
異色な作品を試してみる的な作品。
悪くはない作品でしたね。
ただ、ガス欠のその後は気になりますね。不完全燃焼のまま終わらせるのも、試みの一つなのか…真相は著者のみぞ知るのでしょう。
驚きこそありましたが、一味違った世界を見させてもらいました。とても良かったです。
優しい心になれる作品にも期待しています。
ありがとうございました。
- 感想投稿日 : 2023年10月3日
- 読了日 : 2023年10月3日
- 本棚登録日 : 2023年10月3日
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