2巻において提示された早坂あかね提案のルール、それは立花ひかりと自分で桐島司郎を「共有」することだった。
 だがそれは決定的に間違っている提案で選択だった。
 それでも3人は一人の男を外野に置いたうえで「共有」の選択を選び取った。

 桐島司郎が好き、という情動にただ流され従うがために。

 柳先輩を舞台装置よろしく関係性をより歪に、でもそれぞれの距離は極限までゼロになる様に、三人の、いや四人の恋心はドロドロな鈍色を放ちながらさらに先鋭化していく。
 桐島の早坂家お泊りに始まり、ショッピングでの怪獣大戦争、上辺だけの共有。
 そして始まる肉弾戦。麦茶()で酔ったフリをした三人はラブホテルへしけこむ。そこでまず、桐島の
理性が吹き飛ばされ、それに便乗して早坂が純潔を捧げる寸前まで進んでしまう。
 だが、橘がそれを許さず、止めてしまう。そこにあるのは、独占欲の延長線上にあるルールへの想い。桐島を傷つけないための。自分の欲求を欠片でも満たすためのルール。
 ルールというのはもうこの時点で言い訳に過ぎず、ただただ桐島を、自分の一番好きな人をただ自分が独占したい、という想いしか無いのだ。
 止められた行為の熱は橘と早坂のブレーキを壊し、常識や倫理といったものは彼方に置かれていく。
 そこへ、柳 瞬(やなぎ しゅん)と橘ひかりの婚約に関して変化が訪れる。

 橘は共有しながら婚約者である柳と定例の食事会を重ねていく。柳自身は橘ひかりを好きでありながら、文化祭で見せつけられた決定的な破綻を目の前にしても。
 ともすれば寝取られることに興奮する性癖ついたのではと心配になる展開だったが、多分そうはなっていなくて、ただただ一番好きになった女の子に好きになってもらいたいという純正な感情の元、橘に纏わりついているしがらみを取り除く。(実際は橘の気持ち次第でどうにでもなったのだが、一先ず確実にただ一人の女の子に橘を戻すために必要な行程だった。)
 そして奔走する柳と早坂、桐島と橘はフットサルで交流するのだが当然ここでもひと悶着ある。前哨戦ともいうべき早坂と桐島の手淫行為を橘に見せつける様に、決定的にそうしていることは隠しながら二人は早坂が達するまで続ける。その行為を橘が目にしてしまうが、それは一番好きな桐島が居ながらも、二番目に好きな柳と食事に行ったり手を繋いだことへの罰だと橘自身が受け入れてしまう。
 そこから時は進み、橘と桐島による似非催眠幼児退行プレイ(橘妹に見つかりまたとんでもない状況に陥る)
 他方では、ハッピーになれる白い粉を吸い込んだ早坂と桐島による退廃的な行為。(○○を煮詰めただけの超健全な粉)

 そして終盤。クリスマスは早坂が、年越しは橘が桐島を独占することになる。
 今回において早坂の失敗はこのあたりではなかったかな、と思う。ただ、「女の子同士、いろいろわかるところがある」(意訳)とあるため、クリスマスのデートは本当に純粋で、ここだけ見れば他の作品にある様な純粋な交際関係が展開されるが、ここで早坂は決定的な一言を放ってしまう。
 クリスマスが終わり、あっという間に橘のターン。
 またしても、柳の話題を三人で出してしまったときと同様の重苦しい二人の旅行。点でみれば楽しんではいるが、桐島と橘の胸に去来するのは、「最初で最後の二人きりの旅行かも知れない」という不安。それは、クリスマスに早坂が桐島に打ち込んだ楔。早坂はクリスマスデートの終わりに「桐島が一番好きだ」と想いを告げた後、関係の清算を促す。
 早坂を、柳を、何より橘を肯定し続け、だれも傷つかないようにしたいクズ代表桐島による選択の時である。

 だが、その選択がなされることは無かった。
 そう、桐島と橘はどこにも行けないこの恋模様の地獄か...

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2022年5月23日

ネタバレ

Amazonレビューで気になったため購入。

 所謂イラストアドの高さに吸い寄せられたところも大きいが、レビューをふと目にした折、
 どういうストーリー展開になるのか気になった。

 読了感としては、タイトルの通り。
 最初は裏アカを隠そうと藍坂秋人をある画像をネタにして脅迫、裏アカにアップするための
画像を秋人に撮影させる間宮優。
 脅迫についてデメリットを無視して突っぱねることもできたはずだが、平穏無事に高校生活
を送りたいボッチ系男子である秋人は優からのお願いを聞き入れ、塩対応をしつつやりとりを
重ねていく。

 そのやり取りを重ねていく中で、掛け値なしに優しい秋人に想いを募らせる優のモノローグ
が等身大の女の子、という感じでキュンキュンさせてもらった。そして、その想いが積りに積
もって、終盤の告白。
 ストレートに好意を伝えるそのシーンを読んだとき、天井を仰ぎ見た私の語彙は溶けて消え
ただただ「ああああああああああ!」と心で叫ぶしかできないほど純粋な想いの発露。
 この作品を続けて読もう、と決意させた場面だった。

2022年5月22日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2022年5月22日]
カテゴリ ラノベ:ラブコメ
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