さよならドビュッシー (宝島社文庫) (宝島社文庫 C な 6-1)

著者 :
  • 宝島社 (2011年1月12日発売)
3.81
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本棚登録 : 15301
感想 : 1667
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読んでいく中で、傷つきながらも周りの大人達に厳しいながらも成長していく藻ところがミステリー小説とは思えないほど熱く、青春小説としてとても面白かった。彼女が生きる世界には彼女の気持ちを蔑ろにする人も多い中で、彼女に本気で向き合う人たちが叱咤激励で彼女を導き、それに彼女も奮起して強くなっていくところがとても格好いいと思った。そして彼女がコンクールで見せたパフォーマンスには成長の全てが込められていて物語に没頭してしまった。

 ミステリー小説としては、主人公が遥ではなくルシアであり、彼女の視点で物語が進行しているという事には全く気づくことが出来なかった。そのきっかけも周りの人間達の思い込みによってルシアは『香月遥』として生きなければならないという運命を背負うこととなってしまったことにはとても辛く重たいものを感じた。また彼女の母親も自分で遥だと勘違いしたにも関わらず彼女の正体に気づいて遺産目的だろうと問い詰め、それにより死亡してしまうところは、この真相を知るとなんとも哀れだと思ってしまった。なんというか、この母親も『遥』を蔑んだ同級生と同じく中身から腐り始めていたのかもしれない。岬に真相を暴かれた彼女は罰を受けることになるが、その前のステージに上り、戦友とも言えるドビュッシーと別れるシーンでタイトル回収に鳥肌が立ってしまった。最後にこんな素晴らしいストーリーを作っていただいた中山先生にささやかながらの感謝を届けたいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー小説
感想投稿日 : 2021年5月9日
読了日 : 2021年5月9日
本棚登録日 : 2021年5月2日

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