〈序文〉
情報洪水という見方はもうアップデートしても良い頃合いだと思う。エコロジーそのものが、外的情報の海洋領域と、内的情報の陸地領域のバランスを決定的に変えてしまったとみるべきだ。
この段階では直接情報を自分の五感で摂取しなくとも、食物連鎖による生物濃縮のように、他者や環境を通して間接的にどんどん情報を摂取することになっている。もうスマホと閉じても、テレビを消してもしょうがないところまで来ている。
さて、そのなかで内臓音楽なる自然的な創作物を望んでいる著者のスタイルも今では珍しくない。解毒や治癒としての対処療法。そのための文学、芸術。が、そのものがさらにこの情報環境全体に取り込まれていく状況。
パブリックから切り離されたプライベートな領域に置ける、個人的に重要な意味を持つ芸術や文学。孤独から生まれた孤独へと帰っていくような、暗室のなかの灯りのようなもの。
それが序文のための序文、もといメタフィクションであるのかどうかは別として、純粋な虚構性を探しに行こうと旗揚げしたこの序文には、錆びない切れ味が宿っているように感じた。(2023/12/12)
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- 感想投稿日 : 2023年12月12日
- 本棚登録日 : 2023年12月12日
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