筆者個人の体験に根ざした半自伝的な一冊。
1970年代、都内の小学校で試みられた「自由で民主的」な教育。
それは個人の自由よりも集団行動を優先させた極端な民主化の姿でもあった。
集団行動に馴染まない筆者を追い詰めていく場の空気感が怖しい。
原センセよりは少しあとの世代ですが、やはり同じような雰囲気が、当時の公立小中学校にはあって、異常なまでに児童、生徒による「自治」が推奨されてたんですよ。生徒総会とか、生徒会選挙の熱狂が凄かった。
ただそれも、一部の先生方による強いられた「自治」だったのだなと、いまとなっては思う。
係を選ぶときに立候補させ「ダメな方」を落選させる消去法選挙。ベルが鳴ったら席に着く「ベル席」の仕組み(座ってないと減点)。非協力的な児童を責め立てて「自己批判」させる謎の空気。
当時はなんだかよくわからなかった「熱狂」の、思想的背景を知る意味で、ものすごく腑に落ちた一冊でした。
集団行動に馴染めなくて疎外されていく、原センセなのですが、鉄道趣味や、中学受験による塾通いで「外の世界」を持っていることが救いとなっていく。
学校や家庭以外に、第三の場所があることの大切さも教えてくれる一冊でした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年10月8日
- 読了日 : 2022年10月8日
- 本棚登録日 : 2022年10月8日
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