それまで冒険小説などのいわゆる娯楽小説が大半を占めていた中でいわゆる私小説というジャンルを創設したのがゲーテ。啓蒙主義に基づいた理性への信頼全盛の時代にあって、恋愛にまつわる激情を描き出した画期性はたしかにあったのだろう。あったのだろうけど人生経験の乏しさゆえか、そこまで没入は出来なかった。ゲーテに言わせればウェルテルに共感できない僕はまだまだ不幸な人間なんだろう。
しかし、表現がいちいちロマンチックで刺さった。一番好きなのはこれかな。
「ときどき不可解な気がする。私がこれほどまでにただあのひとだけを、これほどにも熱く、これほどにも胸いっぱいに愛して、あのひとのほかには何も知らず、何も解せず、何も持ってはいないのに、どうしてほかの男があの人を愛することができるのだろう?愛することが許されるのだろう?」
芸術のみならず実務方面でも才能に恵まれて、世俗的成功は意のままのウェルテルが本当に欲しいものは手に入れられないことの哀しさをこれほどまでに痛切に伝える文があるだろうか。
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- 感想投稿日 : 2021年10月1日
- 本棚登録日 : 2021年9月24日
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