「罪と罰」「地下室の手記」に続くドストエフスキー三作目。チェーホフも間に挟んだりして、だいぶロシア人への免疫もつけた上で臨んだ。時代と場所は違えど物語のスケール感や台詞回しの大仰さという意味ではバルザックを挟んだこともプラスに働いた。
膨大な人数の登場人物をここまでのピッチと情報量で描き出し、数ページにも及ぶセリフを交えながら生き生きと動かす。読書量がまだまだ足りない自分にもわかる。こんな小説はドストエフスキーにしか書けない。
内容に立ち入ってレビューするには重厚すぎる本作だが上巻に関してはやはり大審問官の件が最重要かと。
宗教の効用は人間が信仰と引き換えに不死を手に入れるといったある種の取引関係にあるのではなく、人間が自らの頭で考えなくてもいいように神の名の下にソリッドな価値基準が設定されることにある、と大審問官は考えているのではなかろうか。その意味では神の存在そのものは問題ではなく、人間が祈りを捧げる対象が必要なのだろう。であるからこそ、大審問官は迷える庶民のために率先して異端審問を行い、庶民たちを導いていく。そこにはごく一般的に考えても道義に反したこともあるかも知れないがそれもまた必要悪であると。ラジカルな考え方ではあるがそれもまた一つの正義。キリストといえども大審問官を批判できないのではないか。
中巻に期待!
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- 感想投稿日 : 2022年2月19日
- 読了日 : 2022年2月19日
- 本棚登録日 : 2022年2月19日
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