田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書 2186)

著者 :
  • 中央公論新社 (2012年10月24日発売)
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感想 : 77
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田中角栄の一生をコンパクトにまとめた新書。昨年(2012年)に書かれたことで、これまでの膨大な角栄関係の著作や資料などにも言及しながら、より冷めた視点で角栄を記述することで、より真実の田中角栄像が捉えられていると思う。

個人的には、田中角栄という人は、非常に男気があり、懐深く、人の気持ちの分かる魅力的な人物という印象。

一方で、政治家としての評価は良くも悪くも極端。

○は、抜群の実行力とリーダーシップ。山一証券倒産の時の金融危機の回避などは、政治家としての類稀なる能力を持った人。そして特質すべきは日中共同声明だろう。

×は、政治思想や政策。これにカネを加える人もいるかと思うが、やっぱり、あの時代はカネが絡むのは致し方ない部分もあると思うのであえて除外。

そして政策は、高度成長時代をそのまま駆け抜ける様な政策であって、もはや彼が総理大臣になった頃には、時代遅れの政策となっていたし、国の継続的な発展を推進するのが、政治の第一であり、富の分配はその次と思うが、これが逆転してしまっている。新潟における自分の幼少時の原体験をそのまま政治で解決しようという政治信条は、総理大臣にしては、ちょっと稚拙すぎる。

時代時代にマッチしたやるべきことが政治にはあり、それに優先順位をつけて、確実に実現していくことが政治だと思うが、そもそものやるべきことがズレていては、逆に実行力のあることが仇になってしまう。

「名君は、暗君にはならないが、暴君にはなる。」

つまり実行力があるから、良いことも悪いことも、やりきってしまう。それが角栄という政治家だろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治
感想投稿日 : 2013年3月17日
読了日 : 2013年3月17日
本棚登録日 : 2013年2月12日

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