夢幻花(むげんばな)

著者 :
  • PHP研究所 (2013年4月18日発売)
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感想 : 782
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「この先立ち入り禁止」の先に何があるのか、
「見るべからず」にはなにが記されているのか。

人の心は不思議なもので、禁止されると知りたくなってしまいます。
「知らなければよかった」と思っても後の祭り。
知るまでは好奇心を押さえられないのは人間の性なのか。

そんな「決して追ってはいけない」夢幻花―存在しないはずの黄色いアサガオを巡る本格ミステリです。

冒頭で唐突に提示される2つのエピソードと、それに続くストーリー。
ばらばらに散らばっているかのようなパズルのピースが最終的にきちっと1枚の絵を作るところは圧巻です。
そしてその絵を見たときに、読者ははっとさせられます。

この本が10年も経って今、世に出ることに非常に意味があると思える作品。
本には読むべきタイミングがあると思っているのですが、
「天空の蜂」と並んで、今だから余計に響く。

もともと響かなければいけない言葉なのに、
以前であればどこか他人事のように感じてしまっていたと思います。
痛みを知って初めて響く。後悔して初めて気づく。
誰しもが持っている、そんな心。
それは人の性と片づけてしまってはいけないと痛感します。
過ぎてしまったことは仕方がないけれど、今ここにある現実は受け止めなければいけないこと。
向き合い、考えること。そんな大切さを改めて考えさせられました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ┣東野圭吾
感想投稿日 : 2013年4月23日
読了日 : 2013年4月23日
本棚登録日 : 2013年4月23日

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