2005年出版。
しかし内容は震災と原発事故、悪化する一方の経済に喘ぐ
今の日本にますますふさわしい。
タイトルからは「何らかの解答」が示されているように思えるけれど、
これは「ほとんど解決不能な問題を前にしたときの考え方」
について書かれた本。
そんな問題に直面した時には「これからどうしよう?」ではなく
「過去にどういった選択をした結果、この状況に至ったのだろう?」
と考えるといい。
コナン・ドイルの「緋色の研究」でシャーロック・ホームズは
「物事を訴求的に推理する(reason backward)」ことの大切さを
説いているが、まさにこれが遡及的な思考。
例えば地球温暖化について著者は
「じゃあ冷房の温度設定を28℃にしよう」ではなく
どうしてこうなったかを遡って考える。
すると「炭酸ガスの排出が劇的に増加した19世紀の産業革命」に
辿り着く。それは「自分が必要とする以上のものを生産し、
必要か不必要かに関係なく誰かに売りつけて利潤を増やす」という
道を選択した、ということである。
その結果、原材料と市場の確保のために植民地を必要とし、
いくつもの直接的な戦争と、その後の貿易戦争、
そして様々な廃棄物と炭酸ガスを生み出した。
著者は「じゃあ、産業革命以前に戻ったらどうなる?」
せめて「日本が調子よかった1960年前半くらいに戻ったらどうか」
という大胆な仮説を立てる。
それはあまりにも壮大で笑ってしまうくらいなのだが、
よく考えると妙に納得してしまうものだったりする。
「せめて日本が調子よかった1960年前半くらいに戻ったらどうか」
「新幹線は辛うじてあるが、高層ビルはまだなく、クルマもまばら」
そんなのも悪くないな。と感じさせるのはさすが。
- 感想投稿日 : 2012年4月20日
- 読了日 : 2012年4月20日
- 本棚登録日 : 2012年4月20日
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