最近よくとりあげられる「コミュニケーション能力」
劇作家の平田オリザ氏が、コミュニケーションの背景にある文化的なコンテクストを掘り下げながら、「コミュニケーション力を上げるにはどうしたらいいか」を考える。
日本は、社会の中で暗黙の了解・共通の認識が多く、考えるまでもなく“わかって当然”とされることが多かった。
しかし、経済構造・社会構造が変化し「黙っていたんじゃ進まない」ことが増えて、コトバで言わなければ伝わらないことが増えた。
コミュニケーションは「わかりあえない者」「異質な者」と出会った時に、切実に必要となる。
そこでコミュニケーション能力の開発が取りざたされるようになったわけだが、表面的な言語技術だけでナントカしようとしてもなかなかうまくいかない。
とりわけ、日本は少子化が進み、豊かさゆえに過保護に育つ子も増えて、「わかりあえない者」に接して 自然とわかってもらう努力をする機会は減るばかりだ。
平田氏は演劇の研究の中で、外国語と日本語の構造の違いから外国語演劇を訳してもうまくいかないこと、演者がそのコトバを自身のコトバとして使うコンテクストでなければうまく「言えない」こと、などの課題に取り組んで来た。
その研究が、上記の「コミュニケーション力」の育成に繋がるのではないか?と教育現場からの引きがあり、寸劇の教材を提供したり医療関係者の育成現場にプログラムを作ったりされている。
欧米の教育では「演劇」の授業が多く盛り込まれている。
長らく不思議に思っていたが、それが、コミュニケーション力=コミュニケーション技術の向上に役立つ、ということがよくわかる。
演じるとは何か?
日本人は演じるというと仮面をかぶり自己を偽るようなイメージを抱きがちだが、そういうものばかりではない。
自分の考えていること感じていること思っていることを、できるだけ的確に相手が受け止めやすい形で発信する、その工夫も演じる ということではないか、と平田氏は言う。
そういえば、大女優ストリープが言っていた。
決して美貌の人ではない彼女だが「高校時代に人気者でいられたのは、私に演技の才能があったから。」
“いざ行かむ 行きてまだ見ぬ 山を見む このさびしさに 君は耐ふるや”
- 感想投稿日 : 2013年2月7日
- 読了日 : 2013年2月7日
- 本棚登録日 : 2013年1月4日
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